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4-5. 天井と屋根 (1)

4. オフィスビルの部分

室を構成する部位として、床、壁、天井という言う方をしますが、抽象的なキューブとしての室を想定するときには、壁が垂直面であるのに対して、床と天井は水平面であるという水準では同一です。ただし、人が地球上に生きている限り重力からは逃れられませんので、そこで人や物の荷重を支える水平面としての床と、室の上を覆う天井面というように意味が分かれてきます。
また、建築物とは何か?と考えたときに、外と内を隔てるものだと考えることが出来ます。そもそも何も無いところに内も外も無いですが、建築物があることによってその内側と外側が自ずと出来るということです。天井という言葉を考えたときに、天井は内側の上部の水平面だというように位置づけられます。先ほど例に出した抽象的なキューブは実際には厚みがありますが、その内側が天井で外側の面は屋根となります。当然ですが、屋根は室を構成するものではなく、建物の全体のボリュームを外壁とともに構成するものと考えられますが、機能的にも雨風を隔てるということで、外側に面しているということが意味を違えています。

4-4. 床 (5)

フローリングの床を使っているオフィスはあまり多くはないでしょう。私たちがオフィスビルの執務空間を設計する時には大抵、床材にはビニルタイルやタイルカーペットを選択します。理由は概ね使用上の要請からきていて、例えばOAフロアからの配線を立ち上げるのにタイルカーペットであるならば、簡単に線を取り出せること、あるいはタイルカーペットであるならばとにかく繰り返し敷き込むだけで簡単に床面を作れることであったりします。またロールのカーペットと違って、部分的に汚した時にはその部分だけ取り合えれば済んでします、というメンテナンス上のメリットもあります。但し、意匠的にはどうしても凡庸になりますし、とても見慣れた単位の繰り返しになるのであまり面白いものではありません。
ビニルタイルというのも割と同様の理由でオフィスの水廻りに使用されている素材でしょう。もちろんカーペットとは素材感は全く違いますが、主たる違いは撥水性というところだけで、目的的なポイントはきっと一緒でしょう。
ところでオフィスビルというとこれらの床材はかなり形骸化して使用されてしまっているように思います。いずれOAフロアの必要性も無くなれば、オフィス床の意匠的な自由度はきっと高まっていくことでしょう。

4-4. 床 (4)

図4-4-2:OAフロア

図4-4-2:OAフロア

現在ではOAフロアでも幾つもの種類が開発されて、利用されています。上図のものはよく見られる一般的なもので、500角程度のプレートを4本の足で支えるシンプルなものです。高さの調節ができたり、配線のルートを選ばないという意味で最も使いやすく普及しているモデルだと思われます。

図4-4-3:OAフロア2

図4-4-3:OAフロア2

一方で上図のこちらのモデルは配線ルートが限定されているものです。ただし、先のモデルに比べて上にのせるパネルを支えるスパンが短くなっているので全体的に薄く納めることが出来ます。
何はともあれ、ネットワーク技術の副産物であるOAフロアは同じくネットワーク技術の進展によりいずれは消えゆくものなのではないかと筆者は考えています。無線LANネットワークが既に多くの人々の間で一般的になっており、「ノマドワーカー」といった言葉ももてはやされるように、ノートパソコンあるいはタブレットさえあれば仕事を出来てしまう時代になりつつあるからです。

4-4. 床 (3)

「室」を構成する単位としたときの「床」は、言うなれば抽象的な水平面ですが、実際には厚みをもった中身のある床です。階を重ねた時には下層階にとっての天井が上層階にとっての床となることもあるでしょうが、ここではオフィスビルを考えるということもあり、鉄骨造や鉄筋コンクリート造をベースとして考えた時の床の荷重を受けるスラブが床のベースとして考えても良いでしょう。
昨今のオフィスビルはその上にOAフロアというスラブから浮かせた床材を仕込むことが一般的です。数十年前であれば、働き方としてはデスクワークであってもパソコンを使うことは特定の職種に限られていたでしょうが、現在ではあらゆる職種でパソコンのないワークスタイルを考えることはできないと思います。OAフロア(またはフリーアクセスフロア)自体はデータセンターなどで使用されていたものが、パソコンの普及によってオフィス内のケーブル配線の必要に迫られて一般化されてきました。

図4-4-2:OAフロア

図4-4-2:OAフロア

4-4. 床 (2)

話を少し戻すと、そういう意味での「部分」と「全体」の関係で考えた時に、以前にピックアップしたトイレはある意味、「室」の水準であり、(どの範囲を指すかに依りますが)エレベーターもある意味では「室」の水準のお話でした。一方で自動ドアというものは「室」にはあたらずに、どちらかというと床、壁、天井に類する「部位」の水準のものでした。
今回はこのように水準を整理した時に、「室」を構成する部位」として、床を取り上げてみたいと思います。
先に「瓦を床に敷いたとしても屋根にはならない」と言ったように、床はその物理的な面の重力に対する位置関係によって床として位置づけられます。とはいえ、常識的には床に瓦を敷く様なことは滅多に無くて、適材適所、床には床に適した素材が開発され使用されています。住宅にはフローリングやカーペット、畳やタイルといった素材が使用されていますが、オフィスには「室」によってタイルカーペットやPタイル、ビニルタイルやビニルシートなどが昨今では最も一般的に使われている素材でしょう。