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4-16. 空調機 (5)

ここまでの暖房の方式は何らかのかたちでガスや灯油といった化石燃料、その他を燃焼させて熱エネルギーを採って、暖房に転換したものでした。それ以外に最も使われているものは電気があります。電気そのものが化石燃料から取られたものや自然エネルギーを活用したものなど様々です。またその電気から暖房に転換するのにもいくつかの考え方があります。
電線に電流を流すとその電気抵抗から、電気エネルギーが熱エネルギーに換わります。どこからが暖房かという話にもなりますが、最も単純な例は電気毛布です。電熱線に電気を流すことによって毛布を暖めるもので、ホットカーペットやお湯ではない電気式の床暖房も同じ仕組みに当たります。電気式の床暖房は日本では比較的使われ易いものですが、例えば中国で浴室内に電気式の床暖房を仕込んだところで漏電し、現地の200Vクラスの電圧で感電死する事故があったため、水廻りに限らずあまり使われないようになったとのことです。ただし、温水式床暖房に比べて立ち上がりが早いというメリットがあるので、常時滞在する場所ではなくて、やはりホテルの浴室など裸足、あるいは薄いスリッパで出入りするような場所では使い易い仕組みではあります。

4-16. 空調機 (4)

お湯を媒介にしたものでもうひとつポピュラーなシステムといえば、温水式床暖房が挙げられると思います。建築設備の点でいえば、日本人の1つの特徴としてはやはりお風呂が好きなので、給湯システムの技術に関しては日本には素晴らしいモノがあります。一時期はオール電化と言ってエコキュート(ヒートポンプ)を利用した電気ベースの給湯も盛り上がりましたが、東日本大震災以降はやはり省電力に消費者の嗜好が向かっています。給湯についていえば、電気でなかったらガスとなるわけで、ガスの給湯器の瞬間湯沸かしの性能や自動お湯張り、保温といった機能のお風呂が各家庭に付いているような国は日本以外に聞いたことがありません。
例えばパリでは、ガス供給が無いような古い建物もありますし、そうすると電気熱源になるわけですが、一般的には貯湯式のタンクでお湯を作って貯めておくというのが多く見られます。100リットルから200リットルの70℃程度のお湯を貯めておいてシャワーに使うわけなので、数人が連続してシャワーを浴びたり、湯船につかるということをすれば途中でお湯が無くなるリスクがあるわけです。これらは瞬間湯沸かしではないので、一旦お湯が切れたら長時間待たなければなりません。そもそもお風呂に洗い場があって1つの浴室という個室として完結している日本の習慣に対して、西欧では浴槽内で個人がすべてを済ませる方式です。
水についても、水資源は日本では豊富ですし、その点が西欧的な感覚とは違うようです。
話がかなりずれましたが、このようにガス式の給湯器が発達しているので、その給湯器を利用して同時に床暖房を温水で賄いましょうというシステムは日本では採用し易いシステムです。特に靴を脱いで生活する習慣がある我々は、床暖房は身体的にも大変心地の良いものです。ただし、温水床暖房は万が一お湯を通している配管に事故があると、水漏れは大変なことになってしまいます。

4-16. 空調機 (3)

さてお湯を利用した暖房設備でいえば、西欧では未だに使われているのがラジエターを利用したセントラルヒーティングのシステムです。

図4-16-2:ラジエター

図4-16-2:ラジエター

西欧の都市部では集合住宅が多く、暖房設備を分散させるのではなくて1ヶ所に集中させるセントラルヒーティングのシステムは日本と比べれば普及しているように思います。元々は北欧の方で、発電所でタービンを廻すために作られる蒸気を、そのまま各建物に供給することから始まったようで、各建物ではボイラーによって蒸気の熱を温水にして、そこから生活用の給湯と暖房用の給湯が供給されたようです。システムとしては発電所に限ったことではなくて、ゴミ焼却場からでる廃熱で蒸気を作って、それを周辺地域に供給するというものもあります。地域レベルでの暖房、即ち地域暖房で、筆者もパリ時代に一時期そのようなアパートで生活していましたが、冬でも非常に暖かく快適に過ごすことが出来ました。エアコンと違いラジエターからの輻射による暖房なので空気が乾燥することが無く、組積造の建物の躯体そのものが暖まるので、快適な環境をつくることが可能です。また供給は一般的には24時間なされるので(費用は一律)、帰宅時に部屋が暖まるのを待つなんてことはありませんでした。このシステムは建物の躯体を暖めるので、断熱性能が高い建物の方が効率的です。日本の建物は薄っぺらいものが多く、断熱性能は相対的には劣っているのでこの方式はあまり定着しないのかもしれません。

4-16. 空調機 (2)

暖房に関していえば、直接室内で火を炊く方式では暖炉が西欧世界にはありましたし、日本でいえば囲炉裏や火鉢などが存在しました。現代でも残っているものとしては、炬燵がありますが、元々は木炭や練炭を入れた火鉢のようなものを熱源として使っていましたが、その後電気式の炬燵となって現代にも利用されています。火を利用する方式でいえば、ガスファンヒーターや石油ストーブなどもガスや灯油に火を点して燃焼させることによって暖房をするという方式のものです。筆者(30代)が小中学生時代ではまだ学校の教室の暖房は石油ストーブだったように思います。前方の教師の席の近くに暖房があり、前方の席と後方の席ではずいぶんと温度が違うものでした。ガスファンヒーターは未だ使われているご家庭もあるかと思いますが、石油ストーブは火災予防や一酸化炭素中毒などの危険性は拭えないのでかなり減っているのではないかと思われます。
また火ではなくて、お湯としたものも様々なバリエーションがあります。その最も簡易なものといえるものは湯たんぽでしょう。湯たんぽも元はと言えば火が暖めているのですが、エネルギーをお湯に一旦移しているので、直接人が暖をとるのはお湯からという風に考えることとします。湯たんぽは夜寝る前に布団の中の足下に入れて寝たものです。いわば即席の炬燵のようなものでした。これは日本のものだとばかり筆者は考えていましたが、フランスにも同様なものがあり、徐々に廃れてきてはいるものの未だに愛用している友人もいました。古代ローマのハイポコーストと朝鮮のオンドルのように、場所は違えどある目的の下では同じようなことをするものなのですね。

4-16. 空調機 (1)

4. オフィスビルの部分

以前に「熱環境」の稿でエアコンについて多少触れましたが、本稿では環境というよりも空調機そのものにフォーカスしてみたいと思います。
エアコンの機能としては基本的には室内を暖めることと涼しくすることの2点です。暖める方は古来より火を起こすことで暖をとることは比較的簡単でした。歴史的には古代ローマではハイポコーストと呼ばれる床暖房の一種のような仕組みがあったそうです。室内で火を炊くと酸欠になってしまうのは恐らく経験上分かっていたのでしょう。火を直接部屋で炊かないで、床を二重床のようにして、床下の空間に炉で炊いて暖められた空気を送り込むことで床を暖めるということをしていたそうです。当時の床素材は石だったでしょうし、蓄熱という意味では容量も大きくて快適な床暖房を実現出来ていたのではないかと想像出来ます。朝鮮半島で見られたオンドルも似たような床暖房の方式で、4世紀から7世紀くらいの時期には既に存在していたようです。オンドルの場合は火を焚くのは台所での調理も兼ねていたようです。多くのものが朝鮮半島から日本に輸入されましたが、オンドルも当然持ち込まれたようですがなぜか定着はしなかったようです。

図4-16-1:オンドル

図4-16-1:オンドル