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オフィスビル経営の基本Ⅱ 経営者としての心構え⑪

STEP4.市場分析

市場調査は手段であって目的ではありません。競合の調査を終えた後、自分のビルも含めた比較・分析に進みます。

1.募集条件比較表で比較する

これまで調査し絞り込んだ競合ビルと、自分のビルを比較するために、「募集条件比較表」を作成します。
この「募集条件比較表」は当社が実際に使っているものです。
このサイトを訪問した皆さんが、実際に利用できるよう、PDF、エクセルも用意しました。まずはダウンロードをして「募集条件比較表」の全体、項目を確認してください。

募集条件比較表

募集条件比較表

ダウンロードはこちらから

オフィスビル経営の基本Ⅱ 経営者としての心構え⑩

4.最終的に競合となるビルを絞り込む

前コラムまでの情報収集が完了した後、真に自分のビルと競合する物件を更に絞り込みます。これまで情報収集した物件情報をもとに自分のビルと条件の近い50~60物件を選び出した後、実際に物件を見て歩き、20物件から30物件まで絞るのです。

絞り込むための基準は、オフィスビル経営の基本Ⅱ 経営者としての心構え⑧で述べたとおりですが、この段階では、オフィスビル経営の基本Ⅱ 経営者としての心構え③で詳解した物件評価書も使用し、真に競合するビルを見抜いていきます。

必ず自らの五感でビルの価値を判断していきましょう。車で通りすがりに見ると言う程度ではビルの本当の姿はわかりません。オフィスを探す企業の経営者の気持ちになって、最寄駅からビルまで、ビル周囲の環境、建物の周囲、外観、エントランス、エレベーターホール、エレベーター内、トイレまで隈なくチェックし、自分のビルと競合するかどうかをチェックしていきます。

こうして最終的に絞り込んだ20~30物件が、自分のビルと競合するビルになります。

オフィスビル経営の基本Ⅱ 経営者としての心構え⑨

3.競合物件の情報を収集する

競合物件を選定したら、次はそれらの物件の情報を集めます。自分のビルの正しい立ち位置を把握するためにも可能な限り、詳しく正確な情報を集める必要があります。ビルの情報収集には以下の3種類があります。

①自分で歩いて収集する
自分のビルの最寄り駅周辺など、近いエリアは歩いて探すことが可能です。「テナント募集」の表示は、たいていの場合、問い合わせ先や物件概要などが記載されています。それらをもとに詳細な情報を入手していきます。また、不動産会社店頭の広告からテナント募集中のビル情報をチェックする方法もあります。チラシかあれば、そこから細かい情報も入手できます。ちなみに、自ビル周辺エリアのビル情報は、空室がない時期でも把握しておきたいものです。競合しそうなビルの新築や、空室が増加している現象など、周囲の状況を知っておくことは、不測の事態に備えるためにも必要です。
②ホームページで収集する
貸しビルを扱っている不動産会社のホームページから情報収集します。地域、広さ、賃料などで絞り込み検索をして、該当する競合ビルを抽出します。さらに、立地や賃貸条件、設備など個々の物件の詳細情報をチェックします。不動産会社によって内容は様々ですが、図面など詳しい情報を掲出しているケースもありますので、多いに活用したいものです。
③貸しビル専門の仲介業者から情報をもらう
一番効率的で信用のできる情報収集がこの方法です。一般に開示されている情報以外にも、専門的な立場で知り得る情報が入手可能なルートと言えます。ただし、日頃からこのような会社との付き合いがないと情報収集は難しく、すべてのオーナーが利用できるわけではありません。

以上の方法で情報収集をしたら、次は実際に競合となるビルを絞り込んでいきます。次回で具体的に説明します。

オフィスビル経営の基本Ⅱ 経営者としての心構え⑧

2.具体的な競合物件を選ぶ基準

満室になるレベルを把握したら、次は具体的に自分のビルと競合する他物件の調査です。とはいえ、首都圏には数え切れないほどのオフィスビルがあり、これを「自分のビルと同規模」という切り口だけで分類するのでは、見て回るのに何年もかかることになります。
そこで、まずは競合する物件を選ぶ必要があります。以下、競合物件を選定する基準をご説明いたします。

①地域
企業がオフィスを探す場合のエリアは意外と流動的で、都心エリア全域が競合になり得ますが比較のためにはある程度絞りこむ必要があります。自ビルの最寄り駅と同じ沿線の2~3駅。複数路線の利用が可能であれば当然、それらの周辺駅も含まれます。3キロ~5キロ圏くらいが目安でしょう。
②面積
仮に自ビルの基準階が50坪として、50坪のビルだけが競合とは限りません。企業が50坪のビルを探しているケースでも背景は様々で、必ずしもジャスト50坪という意味ではありません。自ビルを基準に上下に幅をもたせた範囲で選びましょう。
③築年数
ビルの劣化の度合いは、管理、メンテナンス、修繕工事の程度により差が出るので、実際の数字だけではわかりません。そのため面積同様、幅をもって選ぶ必要があります。自ビルが築10年としたら、築5年~築20年程度でしょうか。自ビルのメンテナンスに自信があれば、もう少し築浅のビルを加えてもいいでしょう。
④グレード
ビルの共用部分、設備などのグレードです。自ビルのレベルを10として多少低めの7~8から15くらいが範囲内ですが同じレベルか、それ以上のレベルのビルを対象にするのが理想です。これはビル経営にとってテナント審査にも通じる重要な意味があります。レベルの高いビルを競合とすることで、自分のビルにも優良企業に入居してもらうための努力をします。芳しくない企業の入居という事態を招かないためにも、グレードによる選定をしっかりしましょう。

オフィスビル経営の基本Ⅱ 経営者としての心構え⑦

STEP3.市場調査

ステップ2にて自分のビルの価値を客観的に評価し終えたら、次は、自分のビルが実際の市場でどのような位置にあるのかを分析するための市場調査を行いましょう。

1.満室になるレベルを把握する

市場調査で最も大切なことは、テナントのニーズを把握することです。オフィスビルの場合、どのようなビルであれば満室になるのか、を知っておく必要があります。

ここでポイントになるのは、市場調査と称してレベルの低いビルだけを調査しても百害あって一利も無いということです。
テナントさんはオフィスビルを決めるとき、多くの候補を実際に見に行きます。そして選ばれるのはそのなかで1番のビルだけです。駄目なビルの基準に合わせていてはいつまでも満室にはなりません。

そこで、景況に関係なく、一定の成績を収めていることが多い大手4社のビルで、自分のビルと規模が同程度のビルを基準にして、満室になるオフィスビルの基準をまず把握しておきましょう。大手4社とは、三井不動産、三菱地所、住友不動産、森ビルを指します。
これら大手不動産会社には長年にわたる実績に裏打ちされたノウハウの積み重ねがあります。中小オフィスビルの場合ですと、過去10年~20年の間に造られたビルで、10~20階、1フロア300坪以下の中高層ビルを規模の小さいものから10棟ほど、先ほどの物件調査書に結果を埋めながら見て歩きましょう。
これにより、たとえ自分のビルの近くに優れたビルが無かった場合でも、レベルの低いビルでよいと勘違いをする心配はなくなります。