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数十年モデルチェンジをしない、ルノー4という車があった。白黒映画のジャンギャバンふんする若いヤクザが、パリの裏道をすっとばしていく安っぽい車である。映画を見てからわたしはルノー4を好きになった。

ルノー4は、お金の無い建築士が、安い土地を借り、才能が無いにしても、自分なりの建築士事務所を建てた、という感じの車である。けれど、貸ビルには合わない。

昔、ジャガーというめちゃくちゃデザインの素敵な車があった。自社ビルには合う。けれど貸ビルには合わない。

自社ビルの素敵な設計は、素敵であればあるほど、他の会社には合わないから、本来なら銀行の担保価値は無い。銀行員にそんなことは分からない。けれど、やはり貸ビルには合わない。

自社ビルのようにダントツに好きになられる必要は無いけれど、少なくともどんなテナントにもイヤだなと思われてはならない。これが貸ビルである。