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4-15. 間仕切り (5)

軽鉄+ボードでの間仕切りの一方で、オフィス器具メーカーが製品として販売しているスチールやアルミの枠にパネルやガラスをはめ込んだものを使った間仕切りもオフィス空間ではよく見られます。

図4-15-2:パーティション

図4-15-2:パーティション

このような製品はパーティションと呼ばれたりしますが、恐らくオフィスのデスクのブースを構成するパーティションが、ブースでは高さが1m程度だったものが、その延長で天井まで上がったもの、といった認識からこのような呼ばれ方をしているのでしょうか。オフィス内の場合、間仕切りが必要なスペースとしては重役の部屋だったり、会議室だったりしますが、それらが必ずしも完全に閉じていなければならない場合、このようなオフィスメーカーが販売しているパーティションは使い易かったりします。室内空間の広がりを考えた場合、やはりガラス張りで視線が通っていた方がゆとりがある空間をつくれます。あるいは欄間として上部がガラスになっていて天井面だけ連続しているように見えるだけで印象はずいぶんと違うものです。中にはパーティションの枠内にブラインドを仕込める製品もあり、必要に応じて閉じれたりするものもあります。

4-15. 間仕切り (4)

間仕切りが内壁であり、非耐力壁であれば基本的には何で作られていても間仕切りとなりますが、現在で最も一般的な作り方は軽鉄にボードを貼付けるようなものです。

図4-15-1:軽鉄壁

図4-15-1:軽鉄壁

上図はボードが貼られる前の軽鉄(あるいはLGSと呼ばれることもあります。)が組まれた状態のものです。天井と床にランナーと呼ばれる部材を沿わせて、それを繋ぐように縦にスタッドを立てていきます。それだけだとスタッドがたわんでしまうので、振れ止めがスタッドを繋ぐかたちで付けられます。開口部もその形状に合わせてランナーを走らせ、その内側に建具の枠を仕込みます。
この軽鉄を下地としてボードを貼っていくわけですが、一般部に使われるものがせっこうボード、その他水廻りなどには耐水性せっこうボードやケイカル板といったように、用途によっていくつかの種類のボードが使い分けられます。このようなボード壁がよく使われるのは、オフィスビルなどでは設計によって建築基準法上、内装制限がかかることが挙げられます。この時には下地および仕上げを不燃材とすることが求められるので、下地を木で組んだりするとこの規定に抵触することになります。ボードも同様で仕上げに木を使えないこともあるので、この軽鉄+ボードの組合せは内装制限をクリアする上で最も一般的な解となっています。ちなみに上の写真の背景がボード仕上げ面となっていますが、そこから一般的には塗装仕上げあるいは壁紙を貼ったりして、普段我々が見ているような壁の状態に仕上がっていきます。

4-15. 間仕切り (3)

現間仕切りはいわば壁の一種ですが壁の分類を考えてみると、外壁/内壁、耐力壁/非耐力壁という2つの水準で壁の特徴を大きく切り分けることが出来るかと思います。このマトリックスで考えれば、間仕切り壁は内壁の非耐力壁という風に考えれば良いでしょう。
元々、柱梁構造の日本建築は大雑把に空間を用意してしまった後に、簡易な壁を建ててスペースを区切るという発想に繋がるとは自然の流れといえるように思います。壁ではありませんが、建具もスライディングの板戸、襖、障子といった日本建築で見られるものは、納まりとしては多くは柱梁と同面でそれらを枠としても使います。壁に穴が穿たれてスウィングドア、窓が取り付く西欧的なあり方とは性格を全く異にします。西欧の建具が壁に取り付くもの、壁に付属するものと考えるなら、日本のこれらスライディング系の建具は独立した可動壁のようなものです。これらは壁ではありませんが、軽快にスペースを区切る役割をしているという意味でやはり間仕切りの1つのあり方です。
これらの建具のあり方をよりライトにした形が屏風だと思われます。「風を屏ぐ(ふせぐ)」ということが言葉の由来だそうで、古く中国の漢の時代には風よけの道具として存在していたようです。日本には7世紀に伝えられて以来、日本の室内装飾の設えとして取り入れられており、狩野永徳を代表として屏風が日本美術の発展のキャンバスとなっています。屏風は一扇(一枚)だけだと倒れてしまうので、いくつかの扇が繋がれて一隻となります。古くは一隻六扇(六曲)が一般的だったようですが、単純なフラットな1枚ではなく複数の扇の組合せであることが、絵を描く際の独特な構図を生み出す源であったということは間違いありません。
ところで屏風は現代日本においても、式典の背景としておかれることが引き続き行われています。有名人が結婚した際の記者会見などでは金屏風が背景に立てられるというのは良く目にする光景です。

4-15. 間仕切り (2)

現代におけるテナントオフィス設計のスタンダードは、建築としてはとにかくスケルトンでオープンなスペースを提供するというものです。そこにテナント企業が入居する際に、それぞれのニーズ、働き方に合わせて間仕切りを初めとした設えをしていきます。建築工事としてはそのように事後的に変更されるプランニングに対応出来る設備的対応がとても重要になってきます。間仕切りで区切られる部屋と空調の吹き出し口が対応出来ている必要があるわけです。電気、情報(LAN)関連で言えば、一般的には床をOAフロアとすればコンセントやLANケーブルを必要な位置から取り出すことは可能で間仕切り壁の位置には殆ど影響しないと考えてよいでしょう。インターネットに関しては無線LANもありますし、電気的な対応は今後ますます技術的には容易となるのではないでしょうか。一方で天井廻りには照明、感知器、空調の吹き出し口、スプリンクラー、放送設備など空気、水、音に関する様々な設備が導入されています。これらは間仕切りの入れ方によっては機能しなくなってしまうので、入居時には適切に対応する必要がありますし、建築時にもよりフレキシブルに対応出来る設計になっていることがテナントオフィスビルとしては重要になってくることでしょう。

4-15. 間仕切り (1)

4. オフィスビルの部分

一般的に日本の場合だとオフィス(あるいはオフィス的な空間)は昔から割合オープンなスペースで、あまり間仕切りがなされるようなイメージはありません。以前に「武士の家計簿」の例を挙げましたが、映画の中でも主人公が働いている場所は大広間のようなところで、そこに多くの人が床座で算盤をはじいていました。
一方で西欧では元々は組積造の壁構造が主な架構の方式だったために、大きな空間はオフィスには用意されておらず、多くは個室程度の大きさに区切られていました。現在でも彼らのオフィスでは日本のオフィスに比べるとオープンになっているというよりも、より個室的な執務空間を目にする機会が多いように思えます。その点は仕事の仕方にも現れるかとは思うのですが、オープンなオフィスでは情報も同僚内でオープンにして、チームで仕事をするのに適しているでしょうし、個室のオフィスでは機密度が高い情報を扱ったり、独りで集中して何かに取り組むという面ではメリットは大きいかと思います。