リフォームの発注、コミュニケーション その1

最近のビルのリフォームに関する話ですが、築15,6年経ってテナントの決まり具合をもっと良くしたい。あるいは賃料を値上げしたいというときに、どのようなリフォームをしたら良いのか。それで絵が上がってきて、提案書が上がってきて、それを見に行ったのですが結局採用できるものはありませんでした。提案したのはうちが遣っている設計事務所なんです。

うちはビル毎で課長さんと担当者のペアが決まっていて、その下に営繕などがついてやっています。メインは担当者がやっていて、それを課長さんが補佐して、リフォームの計画を全部2人でやるという体制です。そこで想像するに、設計事務所さんの方に「こういう問題を感じているのだけれども、提案してくれませんか?」という様に、イメージと問題点だけを伝えるかたちの言葉を使ったのではないかと思いました、発注の仕方ですね。リフォームの基本プランを作ってもらうときにね。そこで推測を続けると、設計事務所さんがどのようなリフォームのプランを作ると家賃が上がるかとか、中小企業の社長さんが部屋を見にきて事務所を決めるときに、どのようなビルを設計すれば多少高い家賃を出してでも気に入って借りてもらえるのか。そういうことは、絶対に設計事務所さんは分かりませんよね。だって、事務所を探している中小企業の方々と設計事務所さんは付き合いがないからね。彼らが3年に1回とか5年に1回とか事務所を移るときに、選択の基準としてどういったところの加重平均でもって決まるのかとか、なんてことは設計事務所としては分析もしていませんよね。例えしていたとしても、その分析を中小企業のオーナーや大会社の総務担当にフィードバックするということもないでしょうし。設計事務所としては不可能だと思うんですよ。

それを「提案して下さい」なんていうのはおかしいですよね。設計事務所さんがそういう発注者とお付き合いしちゃうと、1円の金にもならないのに時間と金を取られちゃいます。そういう仕事の仕方をする人は社会にとって公害ですよ。(笑)

担当者に聞くと「具体的に説明しています。」というのだけれど、設計事務所には全然伝わっていない。「具体的に」という意味が全然わかっていない訳です。

例えばPM(プロパティ・マネジメント)やビルの経営を生業としている会社の担当者としては、ビルが古くなってどこをどうリフォームすれば、テナントさんがすぐに気に入って契約をしてもらえるか。あるいは賃料の更改の時も、きれいにするべき箇所が分かっていれば値上げにも応じやすい。あるいはリフォームをするべきところを分かっていれば、同じようなビルでも家賃を10%とか20%高く貸せる。そういった点を具体的に設計事務所さんに話をするべきです。良くない点とその改善方法、具体的な材料であるとか、その場所の見せ方やディテールなどです。そこで我々素人の知っている範囲の材料、人造大理石であるとか、それを例にしてイメージを伝える。それで材料に関しては、もっとコストが良くてイメージに合うようなものがあれば、探して頂きたいと。より具体的な例を挙げると、正面玄関を明るいイメージにするには、暗い石をつかうと光を吸収してしまって玄関の照度が上がらないから、白っぽい石をつかうとかである。基準階のトイレの場合だと、17,8年前の便器のデザイン、色もくすんでいるので変えたい、といったことです。

少なくともそのビルの担当者は、どのようなリフォームをするべきかを、そういう色々な個々について、すべての基準階の壁、天井に対して材料であるとかを、すべて指示しなくてはなりません。それに基づいて最終的に設計の基本プランを描いて下さいと頼まないと。

うちは経営代行をやっているわけなので、ビルのオーナーさんに対して最初に説明する絵が必要です。どこをリフォームして、どの程度の予算がかかって、でもその分の家賃はどれだけ上がります、ということですね。理想とすれば、A1の図面に全部表現できればいいですね、1枚の絵ですべての説明が出来るようなかたちで。最初はオーナーさんの了承を得るための絵なので、リフォームする必要な場所を表現できればいい。それで仕様書などは空白部分に特記でもって、書いてもらえればいいですね。あとは概算でどの程度かかるのか、箇所箇所でもって設計単価で構わないので書いておく。最終的には30-40%引きになります、といったコメントを添えてです。ビルの規模によってA1に納まるような縮尺は違ってくるけれども、1枚の絵でぱっと見られれば、お客さんの方も分かりやすいし。

それで行きましょうということになれば、あとは業者に発注するための詳細な図面を描かなくてはならないですね。ステップとしてはその2つです。最初、ステップ2は置いておいて、まずステップ1でどの程度費用がかかって、時間的にはどの程度かかるのか、ということを設計事務所さんの方から見積りをもらえばいいわけです。そのように指示をすれば、設計事務所さんも迷う必要がないですよね。それ以上、現地に行って考える時間も必要なくなる。ただ仕上げ関係については、それ以外に目的を達成するためのもっといい材料があるのであれば、探して提案して下さい、ということです。ただ照度であるとかは、ビルの経営の代行者が具体的な指示を出さなければいけないところですね。そうすれば、無駄な経費もかからないであろうし、設計の日数も最短で済むだろう、と。