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デザイン、思想と技術

建築家は自分の図面と実際に作った建築の中で自分の思想を確認しているんだろうね。しかし、「デザインは思想の結果に過ぎない」くらい言っている人はいないのかな。そういう風にいう人がいてもおかしくないよね。一つの切り口として、包括的に真理を代弁する必要もないんだし

大型開発でできた街

自然発生したような街は味があるけれど、大型開発によってできた街は何十年経っても味が出ませんよね。そういう大型開発で出来た街にどこでも似たような店を作っていて、けっこう人が入っています。ちょっと大きいステーションビルなんかでもつくり方が同じで、同じような店舗が入っているし、コンセプトなんかはみんな同じですよね。数年くらい前からダイニングバーと名前のついている洋風居酒屋が増えているし、若い人は喜んで入っていきます。創作メニューって書いてあるけれど、どこに行っても同じ料理だしね。この状況に違和感はないのかな、若い人は。不気味だと思わない?

  ーそうですね、コンビニみたいなものなのかもしれません。どこにいっても同じような商品が揃っていて、確実に欲しいものが手に入る。(本橋)

私はああいう店は入りません。裏通りの汚い店の方だね。

 ー僕も同じです、若いけれど。(笑)(本橋)

フランスとニューヨーク

コルビュジェの展覧会に行った時に3巻組のDVDを買いました。サヴォア邸、ピロティがあって屋上庭園がある住宅。あれはいいですね。

 ー僕はフランスに住んでいる時に何度も行きました。パリの郊外にあるのですが、友人が旅行でパリに遊びに来る度にサヴィア邸は連れて行きました。(本橋)

バランスがすごく良いからね。サヴォア邸とロンシャンの教会が見てみたい。

 ーロンシャンはパリからだと、朝一番の電車に乗って往復一日かかるくらいのところにあります。ぜひ観に行って下さい。(本橋)

でもフランスは遠いしね。(苦笑)アメリカに行った時は往生しましたよ。ニューヨークまで10数時間かかるでしょ。20年くらい前の話ですね。マンハッタンに行った時にびっくりしたのが、建設中の超高層があったのですが、鉄骨が細いのに本当にびっくりした。日本の鉄骨とは全然違いますよね。マンハッタンは岩盤だし地震が無い、風だけだからね

養老天命反転地から

養老天命反転地を知っていますか?友人と3人で行ったことがあるけれど、面白かったよ。斜めもいいなって思います。よく夢の中で家の床が斜めになるのを見ます。斜めだなあ、と思っていると、そのうち揺れ始めて。そういうのをよく見るんですよ。わたしの家はRCだし、実際にはならないだろうけれど。

 ー養老天命反転地に関して言えば、僕も行きましたが、最初は楽しくて子供のように走り回りましたが、すぐに不愉快になりました。疲れちゃって。(笑)体力がもたないんですよね。(本橋)

やっぱり家もそうだけれど、体力に応じて階段があったり無かったり、暑かったり寒かったりする訳で。だからひとりの人間が若い時から歳をとるまで、同じ設計の中でずっと暮らすのはおかしい気がします。ついに東さんも外苑前の「塔の家」を引っ越したらしいから。娘さんが暮らしているようです

作品とテクスト

建築の学生の卒業制作などを見ていると、作品に何らかの意味を付けようとしますよね。人間関係の有り様だとかを考えていて、すごく肩に力が入っている感じがします。

 ーそういうのは教育的には必要だとは思います。(本橋)

でも意味が必要であるとか、意味を説明するというのは違う気がします。建築家は雑誌に掲載する時に自分で解説文を書くじゃないですか。例えば小説で言えば、自分の作品の解説文を書いたりしないから、良いなと思うんですよ。(笑)解釈は観る方が勝手に決める話だから、つくる方は作品でしか主張してはいけないと思うんです、本来は。

 ―建物とテクストがセットで作品だと考えるのはどうでしょう。あるいは観る側のリテラシー能力のなさから仕方なく解説を付けているとか。(笑)まあ、建築はコルビュジェにしろ建物と言説がセットになっていた方が強いですから(本橋)

油絵でも求められれば書くかもしれないけれど、最初から経緯とセットにはなってない。

 ―だからそれが逆に建築の個性だと思えばいいのではないでしょうか、その弱さに対してネガティブにならずに。(本橋)

学会もあることだから、建築は思想の側面が強いのかもしれない。建築のデザインは思想の結果に過ぎない、という言葉でもあれば納得しやすい。