生まれた意味

わたしが不幸だとするなら(生まれたことが原因なら)生んだ親の責任ではなく勝手に生まれたわたしに責任があるとする命題はとりあえず認めない。

記憶もなく親に捨てられ、子を育てあげたのちに、老いた親に逢いにゆく。逢いに行って佳かったと思う。親を赦せたと思う。だが、本当は親を赦せなかった自分を赦したのだ。

一行のボードレールに如かず、という言葉がある。芥川龍之介の”或阿保の一生”の言葉である。肯定しても否定しても、いずれにしてもDNAの戦術なのだろう。

何故生まれてきたのか、あなたに会うためというのは容易い。あなたに会うということはあなたを知ることに他ならない。ところがわたしが知るあなたは”あなた”ではなく、わたしのプリズムを通した”あなた”なのです。わたしが”わたし”のプリズムを知らないかぎり、わたしは本当のあなたに近づくことも会うことも出来ないのです。ですからわたしはあなたに会えるために、”わたし”を知るために生まれてきたのです。