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4-5. 天井と屋根 (5)

天井に様々な設備機器が取り付いているというのと同じように、屋上には更にヘビーな設備機器が載っています。抽象のオフィスビルでは相対的にそれらのサイズが大きくなってしまいますので、屋上庭園どころか、屋上のほとんどのスペースは設備で込み合っていることは普通です。主なモノとしては、6600Vという高圧で受電した電気を実際に利用する100Vや200Vに変換するキュービクルや空調屋外機、避雷針などが考えられます。またエレベーターのカゴを吊る為のスペースとしてオーバーヘッドと呼ばれる部分が屋上部分にせり出してきたり、キュービクルに繋ぐ幹線や空調屋外機の冷媒などを取り出す為の鳩小屋と呼ばれる屋上に突出した部分などがあります。また下階に飲食店が入居しているようなビルでは給排気のダクトが屋上まで上がっていることもあるでしょう。
現代の中小規模のビルにおいては、屋上庭園なんて夢みたいな話で、実情としては設備機器で満たされるとても実際的な場所となっています。建物の熱負荷を下げる為に屋上緑化が推奨されていたりもしますが、現実的には現代の設備機器の有り様を変えなければ当分は屋上緑化が入り込む余地がなさそうです。

図4-5-4:オフィスビルの屋上

図4-5-4:オフィスビルの屋上

4-5. 天井と屋根 (4)

みなさんは中小規模のオフィスビルの屋上に上った事はあるでしょうか?戸建ての住宅などとは違って、オフィスビルでは勾配屋根である事は少なく、ほとんどがフラットな屋根をしています。元来、屋根が傾斜をしていたのは、降って来た雨水を処理するためであり、また屋根を支える構造的に三角形のトラス状の架構とする事が理に適っているためです。近代以降、鉄筋コンクリート造や鉄骨造が発明されたことや防水技術の発展により、フラットな屋根が可能になりました。
ル•コルビュジェが近代5原則の1つとして「屋上庭園」を提唱しましたが、それもこれらの技術的な進化が前提となってのことです。マルセイユにあるユニテ・ダビタシオンの屋上を見れば分かりますが、それは本来的にはまさに庭園としての屋上が想定されていました。住人が集える2つ目の大地として、多様なアクティビティが想定されていました。

図4-5-3:ユニテ・ダビタシオン

図4-5-3:ユニテ・ダビタシオン

しかし、コルビュジェがそれらを提起していたのは、今となっては100年近く前です。その時には家庭用電気はあまり普及していなかったでしょうし、ましてはエアコンなんてなかった時代です。

4-5. 天井と屋根 (3)

オフィスビルの天井面は床と比べて、より多くの様々なモノ、主に設備機器が取り付いています。簡単に羅列すれば、照明器具、空調機器、煙感知器あるいは熱感知器、誘導灯、場合によってはスプリンクラーや非常用照明、無線LANのアンテナ、非常放送のスピーカー、監視カメラがつく事もあります。家具などが置かれる床面と違って、梁などで部分的に下がっていなければ、天井面は見通す事ができることが殆どですので、これらの機器をうまくまとめあげる事がオフィス空間のインテリアデザインには求められていると言えるでしょう。
とはいえ、設備機器は概ね既製品ですし、法的に何らかの認定を求められている類いのものであれば尚更、そのもの自体のデザインを変更する事は難しく、上手にレイアウトをするなり、納まりを調整するなりして天井の意匠をまとめあげるという方針になる事が多いでしょう。現在では電灯の消費電力量の観点からLEDの使用が求められており、照明器具自体にも多様なバリエーションがみられます。意匠的にはそれら照明器具の納まりやレイアウトを天井のデザインの主調とすることが多いように思われますが、その他の細かな設備機器がデザインを壊さないように調整することに設計者は四苦八苦しています。

オフィスビル経営の基本Ⅱ 経営者としての心構え⑭

4.他物件を見ながら自分の物件の条件を考える

これだけ多面的にオフィスを分析、比較すると、自分の物件において妥当な賃料がいくらなのかはおのずから見えてきます。この賃料は条件のうちのひとつの項目としての賃料ではなく、他の条件も含めた、総合的に妥当な賃料です。
企業はオフィスを探す場合、最低限の必要な面積は動かせないものの、それ以外の条件は他の条件との兼ね合いで変更の余地があります。すなわち、企業は賃料だけを見てオフィスを決めているわけではなく、条件を総合的に見て決めているのです。それも他の競合物件との関係で相対的に変動するわけですから、正確な相場というものを把握することはそう簡単なことではありません。
募集物件比較表を作れば、競合物件の条件を全体として比較することができるようになりますので、自分の物件において妥当な賃料を算出しやすくなります。
そうして決定した賃料、募集条件であれば、納得も得られやすくテナントが決まりやすくなることはもちろんですし、賃料値下げの要望にも適切に対応できるようになります。

4-5. 天井と屋根 (2)

より実際的な天井を考えてみましょう。オフィスビルの天井の素材はその空間の音環境に配慮して、ただの石膏ボードよりも岩綿吸音板というロックウール(岩綿)をボード状に成形したものを使うことが一般的です。

図4-5-1:岩綿吸音板

図4-5-1:岩綿吸音板

石膏ボードだと平滑な面なので音を反響してしまいますが、岩綿吸音板は多孔質な素材なので音を吸収します。また、オフィスビルの内装には火災を予防するために不燃材(燃えない素材)であることが求められていますが、
岩綿は金属を精錬するときに副産物としてでるスラグを溶融して繊維にしている人造鉱物繊維なので、燃えない素材なので不燃材の認定を取っています。

図4-5-2:岩綿

図4-5-2:岩綿

岩綿という素材は石綿(アスベスト)の健康被害が社会問題になって以降、代替品として使われるようになりました。見た目も字面も似た様なものですが、石綿は天然の繊維状の鉱物を指します。歴史上の文献にも度々みられ、燃えない衣として珍重されていたこともあったようです。近年になって石綿の発がん性の問題を指摘されましたが、代替品の岩綿には当然、発がん性はないとされています。