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4-5. 天井と屋根 (3)

オフィスビルの天井面は床と比べて、より多くの様々なモノ、主に設備機器が取り付いています。簡単に羅列すれば、照明器具、空調機器、煙感知器あるいは熱感知器、誘導灯、場合によってはスプリンクラーや非常用照明、無線LANのアンテナ、非常放送のスピーカー、監視カメラがつく事もあります。家具などが置かれる床面と違って、梁などで部分的に下がっていなければ、天井面は見通す事ができることが殆どですので、これらの機器をうまくまとめあげる事がオフィス空間のインテリアデザインには求められていると言えるでしょう。
とはいえ、設備機器は概ね既製品ですし、法的に何らかの認定を求められている類いのものであれば尚更、そのもの自体のデザインを変更する事は難しく、上手にレイアウトをするなり、納まりを調整するなりして天井の意匠をまとめあげるという方針になる事が多いでしょう。現在では電灯の消費電力量の観点からLEDの使用が求められており、照明器具自体にも多様なバリエーションがみられます。意匠的にはそれら照明器具の納まりやレイアウトを天井のデザインの主調とすることが多いように思われますが、その他の細かな設備機器がデザインを壊さないように調整することに設計者は四苦八苦しています。

4-5. 天井と屋根 (2)

より実際的な天井を考えてみましょう。オフィスビルの天井の素材はその空間の音環境に配慮して、ただの石膏ボードよりも岩綿吸音板というロックウール(岩綿)をボード状に成形したものを使うことが一般的です。

図4-5-1:岩綿吸音板

図4-5-1:岩綿吸音板

石膏ボードだと平滑な面なので音を反響してしまいますが、岩綿吸音板は多孔質な素材なので音を吸収します。また、オフィスビルの内装には火災を予防するために不燃材(燃えない素材)であることが求められていますが、
岩綿は金属を精錬するときに副産物としてでるスラグを溶融して繊維にしている人造鉱物繊維なので、燃えない素材なので不燃材の認定を取っています。

図4-5-2:岩綿

図4-5-2:岩綿

岩綿という素材は石綿(アスベスト)の健康被害が社会問題になって以降、代替品として使われるようになりました。見た目も字面も似た様なものですが、石綿は天然の繊維状の鉱物を指します。歴史上の文献にも度々みられ、燃えない衣として珍重されていたこともあったようです。近年になって石綿の発がん性の問題を指摘されましたが、代替品の岩綿には当然、発がん性はないとされています。

4-5. 天井と屋根 (1)

4. オフィスビルの部分

室を構成する部位として、床、壁、天井という言う方をしますが、抽象的なキューブとしての室を想定するときには、壁が垂直面であるのに対して、床と天井は水平面であるという水準では同一です。ただし、人が地球上に生きている限り重力からは逃れられませんので、そこで人や物の荷重を支える水平面としての床と、室の上を覆う天井面というように意味が分かれてきます。
また、建築物とは何か?と考えたときに、外と内を隔てるものだと考えることが出来ます。そもそも何も無いところに内も外も無いですが、建築物があることによってその内側と外側が自ずと出来るということです。天井という言葉を考えたときに、天井は内側の上部の水平面だというように位置づけられます。先ほど例に出した抽象的なキューブは実際には厚みがありますが、その内側が天井で外側の面は屋根となります。当然ですが、屋根は室を構成するものではなく、建物の全体のボリュームを外壁とともに構成するものと考えられますが、機能的にも雨風を隔てるということで、外側に面しているということが意味を違えています。

4-4. 床 (5)

フローリングの床を使っているオフィスはあまり多くはないでしょう。私たちがオフィスビルの執務空間を設計する時には大抵、床材にはビニルタイルやタイルカーペットを選択します。理由は概ね使用上の要請からきていて、例えばOAフロアからの配線を立ち上げるのにタイルカーペットであるならば、簡単に線を取り出せること、あるいはタイルカーペットであるならばとにかく繰り返し敷き込むだけで簡単に床面を作れることであったりします。またロールのカーペットと違って、部分的に汚した時にはその部分だけ取り合えれば済んでします、というメンテナンス上のメリットもあります。但し、意匠的にはどうしても凡庸になりますし、とても見慣れた単位の繰り返しになるのであまり面白いものではありません。
ビニルタイルというのも割と同様の理由でオフィスの水廻りに使用されている素材でしょう。もちろんカーペットとは素材感は全く違いますが、主たる違いは撥水性というところだけで、目的的なポイントはきっと一緒でしょう。
ところでオフィスビルというとこれらの床材はかなり形骸化して使用されてしまっているように思います。いずれOAフロアの必要性も無くなれば、オフィス床の意匠的な自由度はきっと高まっていくことでしょう。

4-4. 床 (4)

図4-4-2:OAフロア

図4-4-2:OAフロア

現在ではOAフロアでも幾つもの種類が開発されて、利用されています。上図のものはよく見られる一般的なもので、500角程度のプレートを4本の足で支えるシンプルなものです。高さの調節ができたり、配線のルートを選ばないという意味で最も使いやすく普及しているモデルだと思われます。

図4-4-3:OAフロア2

図4-4-3:OAフロア2

一方で上図のこちらのモデルは配線ルートが限定されているものです。ただし、先のモデルに比べて上にのせるパネルを支えるスパンが短くなっているので全体的に薄く納めることが出来ます。
何はともあれ、ネットワーク技術の副産物であるOAフロアは同じくネットワーク技術の進展によりいずれは消えゆくものなのではないかと筆者は考えています。無線LANネットワークが既に多くの人々の間で一般的になっており、「ノマドワーカー」といった言葉ももてはやされるように、ノートパソコンあるいはタブレットさえあれば仕事を出来てしまう時代になりつつあるからです。