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4-13. 電気設備 (3)

先にあげた13項目の上4項目、「電力引込設備工事」「受変電設備工事」「幹線・動力設備工事」「電灯・コンセント設備工事」はそれぞれがある程度関連しており、いわゆる電気に関する工事です。入居者が目に届く範囲は「電灯・コンセント工事」ですが、電気が電線によって敷地内に引き込まれて、照明やコンセントで使えるようになるまでにはいくつかのステップがあります。
「電力引込設備工事」については、読んで字の如く敷地外から敷地内へ電気を引込む工事です。一般の家庭用電気などでは100Vや200Vといったいわゆる低電圧の電気を使用しますが、電柱間を流れる電線には高電圧の6,600Vの電気が流れています。電圧とはまさに電気の圧力のようなものですが、電線内を電気が流れる際に押し出す力と考えてよいでしょう。例えば都市に供給されるべく発電される電力は相当なものとなり、かつ離れた場所に送るので、低圧ではその電力を流す力が足りません。そこで500kV(500,000V)といったかなりの高電圧で発電所からは電力が送られてきます。そんな巨大なパワーのままでは一般に使えないので、発電所から末端のユーザーの間には何段階かの変電所が挟んで電圧を下げていきます。誰でも皆さんが目にしたことのある鉄塔(特高鉄塔架空線)には、6.6kVの高圧が流れていることが多いようです。

図4-13-1:特高鉄塔架空線

図4-13-1:特高鉄塔架空線

そこからさらに変電所で6,600Vに下げられて、地中やあるいは電柱に架けられた電線で配電していきます。ちなみに東京電力管轄内だけで変電所が1,588ヶ所もあるそうです。

4-13. 電気設備 (2)

さて一口に電気設備といっても、建物内には何種類もの電気に関する設備があります。パッと思いつくものとして、照明やコンセントなどがあるでしょうが、一般に中規模程度のオフィスビルの場合の工種を列挙してみます。

  • 電力引込設備工事
  • 受変電設備工事
  • 幹線、動力設備工事
  • 電灯、コンセント設備工事
  • 電話設備工事
  • LAN設備工事
  • 放送設備工事
  • ITV設備工事
  • テレビ共聴設備工事
  • インターホン設備工事
  • 自動火災報知器設備工事
  • 避雷針設備工事
  • 機械警備設備工事

以上、ここで列挙しただけで13種類ありますが、太陽光発電など特殊な設備を設置する場合はさらに複数種類の工事が加えられます。また、これらの設備はそれぞれが関連しているものもありますし、入居者が普段から目にするものと滅多にお目にかかることのないものとがあります。これらを簡単に整理しながら、オフィスビルの電気設備の全体像を大まかに記していきたいと思います。

4-13. 電気設備 (1)

4. オフィスビルの部分

一般にもある程度知られていることかも知れませんが、建築設計および工事の上で分野ごとに設計者および施工者が分かれています。
それぞれ意匠、構造、機械、電気です。構造設計は読んで字の如く、建築物の構造を設計するもので、木造、鉄骨造、RC造などの構造計算をして、図面で描いている建物が要求されている耐震性などを考慮しながら、構造部材の組み方や断面の大きさを決定します。機械と電気はともに設備設計と言われるようなところで、機械設備については、空調、給排水、衛生(トイレなど)の設計をします。建物内外で気体か液体が流れるようなダクトが関わるような設備と考えれば良いでしょうか。電気設備については、色々な項目があるのですが(後に詳述します)、機械設備と対比的に考えるとするならば、配管(ダクト)に電気的なものが流れるようなもの全般の設計をします。意匠というのは、建物そのものをデザインして、構造、機械設備、電気設備を統合して、全体像を作り上げるのが仕事です。
それぞれ意匠図、構造図、機械設備図、電気設備図を作成します。
工事の段階になると、意匠と構造はまとまって建築工事に、機械設備は機械工事、電気設備は電気工事という大枠3種の工事種類となります。規模などにもよりますが発注の段階で、比較的小さなものはこれらがまとめて元請けのゼネコンに発注されますが、元請けは建築工事を担当して、機械と電気工事は下請けにまわされることが多いでしょう。大手のゼネコンは自社で設備部門を構えていますから、全て自社で出来ることもあるかと思います。また、公共工事だとそれらの工事は別ものとして基本的には分離発注されるように思います。分離発注されるとコスト的には下げられるというメリットがある場合もあるでしょうが、その分、工事業者がフラットな関係になるために現場をまとめるのが大変だったりすることもあります。
さてこのような設計と工事のジャンル分けを前提に、今回は電気設備について稿を進めたいと思います。

4-12. 執務空間 (9)

図4-12-9:グーグルロンドン

図4-12-9:グーグルロンドン

上図は検索エンジンのグーグル社のロンドンオフィスの一角だそうです。ここは果たして執務スペースなのか、リラックスルームなのか、もはや良くわかりません。むしろ、そのどちらでもあると言っても良いのかもしれません。ラップトップ一つで仕事ができる環境だと、このようにソファでリラックスしながら仕事をした方が効率は上がるかもしれませんし、同僚と会議室で打ち合わせをするよりも、このようなリビングルームのような寛いだ空間で話をした方が互いに良いアイディアを引き出せるかもしれません。

図4-12-10:フェイスブック

図4-12-10:フェイスブック

同様にこちらもIT系企業のフェイスブック社ですが、工場のような広くて天井高が高く、明るい空間にぽつんとデスクが置かれています。広い社内ですのでスケボーで移動したり、自転車に乗っても良いようです。至る所に現代アートの作品が置かれていてギャラリーの中で仕事をしているような環境でしょう。その他、DJの機材があってパーティをするスペースがあったり、プロジェクターで壁に画面を大写しにしてゲームで遊べるスペースもあるとのことです。
これらの例は非常に極端なのですが、仕事の妨げになりそうにも見えるこのような空間をあえてつくっている意図は明確で、それは社員の能力を最大限に引き出せる環境を作ろうということだと思います。IT系の企業にこのようなスタイルが多いのは、その業態がそのスタイルを許すということもあるでしょうが、それ以上に各人のアイディア、創意を引き出すことが会社に利益をもたらすということが分かっているからだと思います。

4-12. 執務空間 (8)

執務スペースやミーティングスペースなど業務を遂行する場以外に、業務の効率を上げるためにオフィス内に休憩スペースなどの社員用のアメニティスペースを設けることがあります。恐らく一般的には少し環境を変えて、椅子とテーブルが景色の良い場所に並んでいる程度のものが多いような気がしますが、ここではちょっと個性的な例を挙げてオフィス空間の多様なあり方を見てみたいと思います。
社員が休憩する時間と言えば昼食時間、つまりご飯を食べるスペースが考えられます。

図4-12-8:キッチン付食堂

図4-12-8:キッチン付食堂

上図は海外のIT系企業の食堂ですが、手前に野菜が並んでいます。日本での従来の社員食堂といえば、まさに食堂でメニューの中からオーダーして昼食とするという形が当たり前です。しかし、ここでは食堂にキッチンが付いており、自分が食べたい食事を自分でつくるということが可能だと言うことです。食材についても会社側が用意しており、野菜などは余ったら持って帰っても良いとのこと。日本だと一般的には昼休みは1時間でしょうが、そうするとご飯を作ってから食べるなんてしていたら時間がかかって仕方ありません。恐らくですが、ここでは昼休みが長いのでしょう。ワークスタイルが違うからこそこのようなことが出来ます。しかし出されたものを同僚と食べるだけでなくて、つくるプロセスから共同して行うと違ったチームワークが出来そうです。
またこのようなシステムを作ることは文化的な背景があるようにも思えます。欧米やその他地域では場所に依っては、宗教や文化、民族が多様です。その場合、それら多様性を包括的に受け入れられる寛容性がとても重要です。特に食事に付いては宗教的に禁忌となっている食材があったりしますし、調理されている食事については中身が分からない場合もあります。そういう状況も受け入れられる環境として、このようなキッチン付き食堂があるオフィスというのは興味深い例だと言えます。