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5-4. カーペット (2)

カーペットの歴史を探るにあたり言葉を考えてみたいと思います。カーペットとは英語の[carpet]ですが、この語源は古いイタリア語の[carpita]から来ているようで、動詞形の[carpire]はものをドサッと落とす、といった意味があるようです。肩に担いだロールで巻かれた重いカーペットを地面に下ろす時の様子を想像すると良いのでしょうか。あまり合理的にその語源を考えるのには難しい内容です。
ちなみに現代のイタリア語では[tappeto]と呼ぶそうです。フランス語では[tapis]と呼び、これらラテン語語源の言葉はやはり近い音をもっています。ところでフランス語の[tapis]の語源は英語とは異なります。元々は馬の鞍が[tapis]と呼ばれていたそうです。現在の我々がイメージする鞍は非常にがっちりしたものですが、きっと当初は馬に乗る際には簡単な布を背中に乗せていただけだったのでしょう。
日本語では現在ではもちろんカーペットも常用しており意味も通りますが、「絨毯」が日本語としては正しいでしょう。カーペットの定義によりけりですが、古代から日本でも藁などを編んでムシロにしていたので、素材は違えど床を覆う編み物は存在していたとは思います。しかし、現代も言われる絨毯は江戸時代に鍋島藩で製法を学んで作られ始めたことがきっかけのようで、これらは「鍋島緞通」と呼ばれていたようで、「たんつ」という言葉は中国に由来するそうです。その後、明治から大正期にかけて輸入されていたものが「絨緞」と呼ばれた商品が流通するのをきっかけに、「絨緞」という言葉が普及したそうです。こちらも中国語の「ティータン」という音がベースとなっているそうです。

5-4. カーペット (1)

5. オフィスビルの素材

昨今はオフィスビルの居室内の床仕上げはビニルタイル、ビニルシートを敷いたり、モルタルで均しただけのものもあるでしょうが、一番使われているものはカーペットではないでしょうか。恐らくですが、執務にコンピューターが使われるようになり、OAフロアの普及に伴って、タイルカーペットの需要が増えたのだと思います。OAフロアにすると実際問題として、床の配線の遣繰りを考えると床仕上げは自ずとタイルカーペットに限定されてきてしまいます。下足で歩き回ることを考えた時の耐久性や防汚の観点からカーペットよりもビニルタイルなどの方が良い気がしますし、実際に昔のオフィスはそうだったような気もします。ただし、ロールカーペットではなくてタイルカーペットならば、汚れたり傷んでしまった部分についてだけ交換が可能なので、メンテナンス性で問題が無くなったのでしょう。
何はともあれ、現在では度々オフィス内に使われるタイルカーペットですが、無地のもので色を選ぶ程度であったり、柄が入っていたとしても簡単なストライプであったり、あまり意匠的に特別なものは選ばないし、タイルカーペットということでデザインが限定されているように思います。しかし、人類の歴史の中ではカーペットは色々な意味をもってきたものですので、今回も歴史の流れを俯瞰してみたいと思います。

4-11. 駐車場 (5)

2つめはタワー型の駐車場で、街中でも単独で駐車場のタワーとして建っているのもみられます。

図4-11-4:タワーパーキング

図4-11-4:タワーパーキング

メーカーにはタワーパーキングとは違うシステムとしてエレベーターパーキングやフォークパーキングなどもあるようですが、建築の設計者としてはパーキングのシステムそのものより車のレイアウトとパーキング部分の形が建築に影響してくるので、これらは一括してタワーパーキングとして考えても良いでしょう。このタイプは上記写真のように単独のタワーとして街中で見かけるほか、超高層マンションなどでは大きな平面の中心にあえてパーキングをレイアウトして、日照を得られない空間を有効に活用しようという意図が読み取れます。
3つめは地下式パーキングと呼んでも良いでしょうか。オフィスビルに使いやすいものです。

図4-11-5:地下式パーキング

図4-11-5:地下式パーキング

乗入れ口が地上(あるいは地下の場合も)にあって、パレットに車を駐車して、人は外に出ておいて、パレットが地下の駐車場に収納されるものです。地下に入った後、駐車スペースは水平方向に展開されています。オフィスビルの場合は地下に居室をつくるのは難しいですし、高層ビルの場合はいずれにせよ杭や地中梁を大きく取らなければならないので、それらのスペースを有効に活用できます。

4-11. 駐車場 (4)

機械式駐車場は各メーカーがいくつもの商品を出していて、実際に設計する際にも正直言って、それらの差異がよく分かりずらいものですが、大雑把にカテゴライズすると3つくらいのタイプで考えても良いかなと思います。
1つはマンションなどでよく見られる多段式パーキングです。

図4-11-3:多段式パーキング

図4-11-3:多段式パーキング

普通に並ぶような青空駐車の地下や地上部に台数を増やしていくといった感じで、地上5段や地下2段地上4段などといったかなりの台数を納められるものもあるようです。地下1段地上1段や地下2段地上1段のタイプは3列なら上下に移動するだけなので、3列ならばそれぞれ6台、9台駐車できることになります。一方で例えば地上3段のものは、車の出入りはあくまでも地上部なので、3列に並べて空きスペースを作ってスライドさせながら上下させるということで、対応するようになります。つまりこの場合だと3x3の9台置けるのではなくて、その内の1列は1台を除き空きスペースとしなくてはいけないので、7台分置けることになります。

4-11. 駐車場 (3)

もう少し例を挙げて考えてみます。先に書いたように例えば、単純化した計算で1500m2の延床面積のビルに5台の駐車場が必要だったとします。あくまでも延床面積ベースの話なので、この敷地の容積率が800%だったとすると、逆算すれば敷地の面積は200m2を切るわけです。1台あたりの駐車スペースは3x5m=15m2として、先述の通り通路部分も考えれば、15m2x5台x2(通路分)=150m2となり、もはや地上部は殆ど駐車場で占められてしまいます。
このように駐車場の附置が義務づけられた場合には、現実的にはかなり厳しい数字を突きつけられることがあるわけですが、このような状況は大抵の場合には機械式駐車場を利用することによって解決することが多いです。いくつかのメーカーがいくつかのパターンで商品を販売していますが、このような機械式駐車場のラインナップが充実している国は日本だけではないでしょうか?フランスのとある超高層ビルの開発において、駐車場の確保に困った際に日本の機械式駐車場に注目していたという話を聞きます。