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4-9. エントランス (2)

その様な計画上の意味付けは多分に象徴的な意味合いも付与されて、デザインあるいはプラグマティックな水準で各々が差別化されていきます。具体的にどういうことかというと、メインエントランス廻りはお客さん、あるいは古い住宅なら主人が出入りする場所なので、良い素材を使って豊かな空間にし、メンテナンスもこまめにされるでしょうし、サービスエントランスならばデザイン上はどちらかと言えば使用上の要求に対応した上でなるべく安く作って、掃除だって滅多にされないようなこともあるかと思います。例えば飲食店などの客商売をしている建物はその傾向は顕著にみられます。お客さんを迎えるエントランスは非常にきれいに整えていたとしても、その裏に回ればあまり他人に見られたものではない光景が広がっていることが殆どでしょう。あるいはサザエさんの家を思い出しても良いですが、古い住宅には表玄関と台所に面した勝手口がありました。
建築の設計でよく「表」と「裏」をつくるように設計がされますが、それは計画上のこれらエントランスとの対応と考えても良いでしょう。

4-9. エントランス (1)

4. オフィスビルの部分

建築とは何か?といったときに、1つの答えとして「内部」をつくり「外部」から切り離した環境をつくる、というようなことは考えられます。西洋的な建築が内外の境界を強くつくるのに対して、日本建築が内外の空間を連続させているといったクリシェは、度々挙げられるトピックです。ということで、「内」「外」の関係ということは建築の最も根源的なテーマの1つとして未だに考えられるわけですが、今回取り上げたいと思っている「エントランス」はその内外の関係を繋ぐ重要な建築の部分だと考えられますし、無くてはならない部分です。(エントランスが無いということは、その中に入れないということですので。)
エントランスには扉があることが殆どでしょうが、その他の場所にも窓や扉がある可能性もあります。エントランスに大きなキャノピー(庇)が出ていることもあるでしょうが、それは必ずしもエントランスだけではなく、その下にカフェがあって雨の日でも使えるようにとの配慮でデザインされることだって考えられます。
エントランス[entrance]を字義通り[enter+ance]で捉えると「入口」、人が出入りできる箇所、つまり扉が付いていればエントランスになってしまいます。しかし、一般的には「メインエントランス」「サービスエントランス」といったように、上述のような物的な状況から位置づけられているというよりも、計画的な視点からエントランスの意味が付与されていると考えて良いかと思われます。

9-2. オフィスビルの付属品 (3)

最近のマンションでは宅配ボックスのような大型のものも受け取れるようになっているようですが、郵便受けしか無い場合で宅配便ではなくて郵便物が大きすぎる場合はどうなるのでしょうか。郵便物扱いのものについては、これまた郵便法に郵便物のサイズの上限が定義づけられています。
第十五条 (大きさ等の制限)  郵便物は、次に掲げる大きさ及び重量を超えることができない。
一 大きさ
長さ 六十センチメートル
長さ、幅及び厚さの合計 九十センチメートル 」
A3サイズで42cm x 30cm 程度なので、この場合は厚さ18cmまでは郵便物として送れるわけです。本来なら郵便受けはこの程度のサイズを受けとれる様な規格が想定されているべきなのでしょう。いずれにせよ一般的にはA4サイズくらいがベースとなっているデザインの郵便受けが多いように見受けられます。ちなみに郵便物が郵便受けに入らない場合は、実際にはインターフォンで呼び出しをして、もし不在の場合には不在票を残していくという対応はしてくれているようです。
ところでこれらポストは当然ですが入居している入居者ごとに1つは必要となるので、入居者が多い大規模な建物となると付属品であるはずのポストも集まることである程度のサイズとなって、もはや付属品とは言い切れないスケール感になることもあります。

図9-2-1:集合郵便受け

図9-2-1:集合郵便受け

玄関廻りにこのようなモノが出てくるため、デザイン側としては常に悩ましいポイントではあります。

9-2. オフィスビルの付属品 (2)

現代のオフィスビルにおいて郵便受けを設置していないものは一部の例外を除いてないように思えます。想定される一部の例外というのは、意外にも法律上位置づけられています。
郵便に関しては郵便法という法律で枠組みが作られています。そこには事業の独占であったり、郵便物の種類であったり、私たちが日常的に接している郵便の当たり前のことがきちんと法律で謳われています。その中の1つ第43条はこのような条文です。
第四十三条 (高層建築物に係る郵便受箱の設置)  階数が三以上であり、かつ、その全部又は一部を住宅、事務所又は事業所の用に供する建築物で総務省令で定めるものには、総務省令の定めるところにより、その建築物の出入口又はその付近に郵便受箱を設置するものとする。」
条文をパッと見ると建築基準法のようですが、要するに3階以上の建物の出入り口には郵便受けを設置しなさいということが書かれています。つまり1、2階建ての建物が郵便受けを作らなくても良い、上述で言うところの例外として想定されているわけです。これは郵便の料金制度が距離ではなく重さに因って決まっていることも同じですが、とにかく郵便局の職員が過大な労力を必要としないでも業務が遂行できるようにというところから来ています。(郵便物の1つ1つを距離に応じた料金体系にすると、いちいち送り先までの距離を算定するのが大変なので。)
法令上では他の条文については抵触すれば罰則規定も決められていますが、43条については罰則規定があるほどではありません。とはいえ、書留を除けば3階以上の階に郵便局の方が配達には来てくれなさそうなので、どうしても必要に応じるかたちで、玄関廻りには郵便受けを設置しなければならなくなります。

9-2. オフィスビルの付属品 (1)

9. その他のこと

今週の残りは「オフィスビルの付属品」について書きたいと思います。あまり細かいことはあまりオフィスビルには関係が内容にも思えますが、オフィスあるいは建物には必ずと言っていいほど避け難く付いてくるモノがあります。郵便受けはその1つですが、その他スイッチプレートやコンセントプレート、インターフォン、火災報知器などです。それぞれ床に付くもの、壁または天井に付くものなど様々ですが、これらまさに「付く」ものは付属品のようなものなので、設計時にはそれほどキチンとはデザインされないもので、工事現場の流れの中で調整して後から決まっていくことが慣習的に多いです。また、消防関連の機器の場合は認定が取れているものでなければ使用できなかったり、スイッチプレートなどは電気の規格が決まっているためにデザインの選択肢が決められています。これら付属品はデザインにとっては多くの場合は想定外の邪魔者で、どれだけ目立たないでこれらの設置を対応するかというあたりが、デザイン上の肝になることが殆どだと言っても良いでしょう。
まずはその中でも比較的デザインのコントロールがしやすい、郵便受けについて考えます。