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8-3. 火災 (7)

また異種用途区画というのは、同じ建物に複数の用途がある場合にその用途間は区画しましょう、というものです。例えば、飲食店の火災の発生条件とオフィスの火災の発生条件はもちろん大きく異なるものなので、それらの火災のリスクを限定するために区画を求められています。
その他に各階毎に建物を区画する、水平区画(あるいは層間区画)と呼ばれているものもありますが、これらはそもそも耐火建築物の要件で床を耐火構造にしなくてはいけないので、ことさら水平区画と呼ぶ必要もありません。ただし、区画は立体的にも間違いなく区切られているかは必ず必要なので、平面的な区画に加えて断面的な区画の概念を考えるために、水平区画という考え方を導入しても良いでしょう。
また、これらの防火区画に付随する要件として、外壁に条件(実際には開口部の条件)があります。防火区画に接する外壁については、それらが接する部分を90cm以上は準耐火構造、あるいは50cm以上の準耐火構造の袖壁で分けなければならないというものです。これは言い方を変えれば、外壁はそもそも耐火構造なので、階を挟む窓同士が90cm以上は互いに離れなければならない、という風に読み替えても良いでしょう。つまり床から天井まで、外から見たときに純粋なガラス張りのカーテンウォールは実際には成立することができないということになります。但し、街中には多くのカーテンウォールの建物が見受けられますが、実はそれぞれに工夫がなされていて、外観上のガラス張りを実現しているということです。

8-3. 火災 (6)

ここまで書いてきた耐火や防火の考え方は、それぞれ材料の非損傷性や延焼防止によるものでした。また耐火にはその材料が燃えにくいことに加えて、燃え広がらない建物の構造を考えることが出来ます。そこである一定の規模を超える建物に対して、建築基準法において「防火区画」を義務づけています。「防火区画」とは火災が急激に燃え広がらないように、耐火構造の壁や床によって一定の範囲ごとに区画(空間を分けること)することです。つまり区画された1箇所で火災が発生したとしても、隣りの区画には容易に火が廻らないようにするということです。
具体的には防火区画には大雑把に、面積区画、竪穴区画、異種用途区画の3種類があります。
面積区画は耐火建築物あるいは準耐火建築物の場合に、500m2〜1500m2毎の区画が求められます。また11階以上の階にも100m2毎、あるいは仕上げを準不燃、あるいは不燃材とすることにより、200、500m2毎の区画を求められます。これは高層建物の場合は避難の時間が長くなるので、11階未満の階に比べてより厳しい区画が求められています。
竪穴区画とはパイプスペースや階段の吹抜けなど、建物の構造上どうしても階を跨ぐ空間において、当該部分とそれ以外の部分とを区分することです。当然、熱は上にあがるので、垂直に伸びる空間は火の廻りが早く、燃え広がり易いです。竪穴区画ではそのような火災に弱い場所を限定するものです。

8-3. 火災 (5)

また防火地域、あるいは準防火地域以外の地区地域で法22条地域と呼ばれるものがあります。これは防火や準防火ほど規制が厳しくはないものの、その区域内の建物の外壁や軒天を延焼の恐れのある部分を防火構造として、屋根は不燃材で葺くように定めるものです。
ここで出てくる防火構造というものは、火災に対して30分以上の耐力があるものとされています。
またここで材料に関する話が出てきます。ここでは不燃材となっていますが、その他に準不燃材と難燃材というものが存在します。これらは読んで字の如く、素材が燃えないかどうかというところが材料としての判断の分かれ目で、通常の火災時に20分以上燃焼しないものが不燃材、10分で準不燃材、5分で難燃材というのが目安です。具体的な材料としては、不燃材はガラスやコンクリート、石などで、準不燃材は石膏ボードや木毛セメント板など、難燃材では難燃合板などが挙げられます。それぞれ建設省の告示で材料が定められている他、材料ごとに必要な性能を充たしているとのことで認定を取得することが出来ます。

8-3. 火災 (4)

建物を耐火建築物にするには、「主要構造部が耐火構造である」こと、及び「外壁の開口部の延焼の恐れのある部分については防火戸あるいは防火設備とする」ことが要件となっています。
建築物の「主要構造部」は柱、梁、床、屋根、壁などを指していて、「耐火構造」であることは通常の火災時に非損傷性と延焼防止の性能を備えていて、要するに火災時に内部にいる人が避難を終えるまで建物として持ちこたえられるような構造になっていれば良いということです。具体的にはそれぞれの部位とその位置について、何時間の耐火性能があるかという規定がされていて、それぞれの場所に適切な耐火被覆などを施さなくてはならないということになります。
また「延焼の恐れのある部分」というのは隣地境界、または道路中心線から地上階3mあるいは2階以上は5mの距離の範囲内にある場所を指し、その範囲にある開口部については規定の構造としなければならず、サッシュの材料、厚さやサイズ、ガラスの種類などが定められています。これはあくまでも防火(隣地から火をもらわない)という考え方で、耐火という考え方とは違うのですが、それでも耐火建築物の要件に含まれています。

8-3. 火災 (3)

これら江戸時代に火事が起こった時の消火活動は水をかけて火を消火すること以外に、燃え広がらないように被災している建物の周囲の建物を破壊してしまうということがありました。現代においてはさすがに隣接した建物を破壊するということはありませんが、そこにあるアイディアとしては隣りにある火はもらわないようにするということです。
建築基準法では火災に対しては柱となる2つの考え方があるように思います。1つは防火、つまり火をもらわない様な建物の作りにしておくこと。2点目は耐火、火災が起こったときすぐに燃え尽きてしまわないで、中にいる人が逃げられるようにしておくということです。これら2つのアイディアは完全に独立しておらず、よく混乱するので、これらを順に整理して考えてみます。
防火に関する条項として、都市計画的な視点からの防火地域、あるいは準防火地域という地域地区の指定があります。これは建物が密集している地域に関して、建物が燃え広がらないようにしましょうということで指定されている地域地区と考えて良いでしょう。これらの地域に指定されている敷地においては小規模な建物を除き耐火建築物あるいは準耐火建築物にしなければならないという規定です。ここで早速、耐火建築物という考え方が出てきました。