新着情報

初めに選ばれる建築設計Ⅰ 建築設計業務の内容①

優れた建築設計会社を得るために

まずは建築設計の場合から解説していきます。
ここまで、経営者の心構えとして、自身のビルの評価の仕方から市場調査の方法まで説明してきました。これにより、当該建築設計会社が設計を行ったビルを全て見て回れば、依頼するとビルの総収益額が高くなる「優れた専門家」かどうかを一定程度判断できるようになっているはずです。

しかしながら、建築設計会社のWEBサイトを巡ってみると、設計実績が公開されているのは、大規模な建築案件を得意とする設計会社や、注文住宅を得意とする設計会社がほとんどであって、中小オフィスビルの設計実績を積極的に公開している建築設計会社が非常に少ないことに気が付くはずです。
個性を出しやすい大規模建築や注文住宅と異なり、テナントに評価される、基本に忠実なデザイン・設計を守りつつ、他社よりも優れた結果を出し続けることは、非常に難易度が高いことであるからです。
そうであればこそ、【中小オフィスビルの建築設計実績を公開しているかどうか】は、「優れた専門家」であるかどうかの重要なメルクマールとなり得るわけですが、ほとんどの建築設計会社が自社の中小オフィスビル設計の実績を公開していない以上、経営者としては建築設計会社の仕事ぶりからも判断できるようになっておく必要があります。
あるいは、実績を見る限りは優れた専門家に見える場合であっても、それはあくまで過去の仕事であって、今後も優れた専門家であり続ける保証はありません。専門家が自身のビルで手抜きをしていないか、堕落していないかを見極めるためにも、ビルオーナーも建築設計業務の内容について一定程度勉強しておく必要があります。
そこで、次回から建築設計業務の内容について詳解していきます。

4-9. エントランス (1)

4. オフィスビルの部分

建築とは何か?といったときに、1つの答えとして「内部」をつくり「外部」から切り離した環境をつくる、というようなことは考えられます。西洋的な建築が内外の境界を強くつくるのに対して、日本建築が内外の空間を連続させているといったクリシェは、度々挙げられるトピックです。ということで、「内」「外」の関係ということは建築の最も根源的なテーマの1つとして未だに考えられるわけですが、今回取り上げたいと思っている「エントランス」はその内外の関係を繋ぐ重要な建築の部分だと考えられますし、無くてはならない部分です。(エントランスが無いということは、その中に入れないということですので。)
エントランスには扉があることが殆どでしょうが、その他の場所にも窓や扉がある可能性もあります。エントランスに大きなキャノピー(庇)が出ていることもあるでしょうが、それは必ずしもエントランスだけではなく、その下にカフェがあって雨の日でも使えるようにとの配慮でデザインされることだって考えられます。
エントランス[entrance]を字義通り[enter+ance]で捉えると「入口」、人が出入りできる箇所、つまり扉が付いていればエントランスになってしまいます。しかし、一般的には「メインエントランス」「サービスエントランス」といったように、上述のような物的な状況から位置づけられているというよりも、計画的な視点からエントランスの意味が付与されていると考えて良いかと思われます。

Kビル新築工事(第17回定例会議)

事業名・工事名

Kビル新築工事

日時

2014年5月14日 / 10:00~11:50

場所

トゥループロパティマネジメント(株) 第3会議室

出席者

設計監理(建築)
トゥループロパティマネジメント(TPM) : ST、MR、MT
設計監理(構造)
K構造設計事務所
施工
T社 : K(現場所長)、M(部長)、I(設備担当)、T(技術営業)
施工(電気)
H社 : F
施工(設備)
O社 : A

1.前回議事録の確認

2.週間工程の説明

施工 K:
次回に6月の月間工程を持ってきます。

3.質疑

【各種仕上の色決めについて】

施工 K:
どのように決定すればいいでしょうか。
設計 MR:
こちらで仕上リストを作成しますのでそれを元に、サンプルやカタログを元に決定して、仕上リストに記入していくということにしましょう。作成したらデータをメールします。
施工 K:
解りました。電気ではスイッチプレート、設備では消火栓BOXや屋外竪配管の色を決める必要があります。
設計 MR:
仕上リストに加筆して共有する形を取っていき、事前に提案していただき決定していきましょう。
施工 K:
解りました。

【事務室空調吹出しについて】

施工 A:
EPSと事務所の区画については排煙区画なのでFDは不要ということで良いでしょうか。
設計 MR:
設計図の通りで問題ありません。
施工 A:
外階段に向けて外壁貫通をする空調ダクトについてはFD付ですが、配管曲りが大きいためFDを付けるスペースがありません。
設計 MR:
外階段の軒天部分を防火区画内として区画する変更ができるか検討してみます。
施工 A:
前回定例でありましたVDと吹出し口のサンプルを持ってきましたがいかがでしょうか。
設計 MR:
吹出し口が二重になって風向き調整可能な吹出し口でVDに取り付けるようにしましょう。
設計 ST:
風量調整は竣工前にすべての吹出し口が均等になるように調整して頂きたい。
施工 A:
極力、均等になるように調整します。

【トイレ排水管の区画貫通について】

施工 A:
異種用途区画の水平区画となるケースが他でありますが、この建物は該当するのでしょうか。
設計 MR:
異種用途区画以前に各階が水平区画です。各階でしか複合用途になっていませんから同じことだと思います。水平区画を貫通する配管ということで設計してあると思います。改めてそこは確認して連絡します。

【ベンドキャップについて】

施工 A:
特記仕様書のメーカーのS社とU社のカタログを持ってきました。
設計 MR:
S社のもので検討したいと思います。基本的に丸型のフラットなものを選びたいと思いますが、風量がぎりぎりのところがあるか確認して教えてください。
施工 A:
解りました。

【予備給気口について】

施工 A:
事務室にある予備給気は必要でしょうか。
設計 MR:
エアコンが稼働していないときに機械給気がなくなりますので、24H換気の給気のために予備給気口を設けています。
施工 A:
解りました。取り付け高さのご指示をお願いします。
設計 MR:
高さは検討します。

【給湯室のキッチンについて】

施工 K:
施工図で検討中ですが、シンクがぎりぎりなのでサイズを小さくすることで検討いただけないでしょうか。
設計 MT:
シンクも小さくしキッチンの奥行きも小さくしましょう。施工図を修正してください。チェックします。
施工 K:
解りました。

【EVインターフォンについて】

施工 K:
EVかごと外部との非常時通話用のインターフォンを取り付ける位置が、設計図では1FのEV呼びボタン脇になっていますがよろしいでしょうか。
設計 MR:
インターフォンが必要か否かまずは確認してください。
施工 K:
解りました。

【1F自動ドアの警備システムについて】

設計 MR:
別途工事の機械警備も含めて合同で打ち合わせを行いましょう。日程調整をしてください。
施工 K:
解りました。

以上

2014.5.30 作成:MT

9-2. オフィスビルの付属品 (3)

最近のマンションでは宅配ボックスのような大型のものも受け取れるようになっているようですが、郵便受けしか無い場合で宅配便ではなくて郵便物が大きすぎる場合はどうなるのでしょうか。郵便物扱いのものについては、これまた郵便法に郵便物のサイズの上限が定義づけられています。
第十五条 (大きさ等の制限)  郵便物は、次に掲げる大きさ及び重量を超えることができない。
一 大きさ
長さ 六十センチメートル
長さ、幅及び厚さの合計 九十センチメートル 」
A3サイズで42cm x 30cm 程度なので、この場合は厚さ18cmまでは郵便物として送れるわけです。本来なら郵便受けはこの程度のサイズを受けとれる様な規格が想定されているべきなのでしょう。いずれにせよ一般的にはA4サイズくらいがベースとなっているデザインの郵便受けが多いように見受けられます。ちなみに郵便物が郵便受けに入らない場合は、実際にはインターフォンで呼び出しをして、もし不在の場合には不在票を残していくという対応はしてくれているようです。
ところでこれらポストは当然ですが入居している入居者ごとに1つは必要となるので、入居者が多い大規模な建物となると付属品であるはずのポストも集まることである程度のサイズとなって、もはや付属品とは言い切れないスケール感になることもあります。

図9-2-1:集合郵便受け

図9-2-1:集合郵便受け

玄関廻りにこのようなモノが出てくるため、デザイン側としては常に悩ましいポイントではあります。

9-2. オフィスビルの付属品 (2)

現代のオフィスビルにおいて郵便受けを設置していないものは一部の例外を除いてないように思えます。想定される一部の例外というのは、意外にも法律上位置づけられています。
郵便に関しては郵便法という法律で枠組みが作られています。そこには事業の独占であったり、郵便物の種類であったり、私たちが日常的に接している郵便の当たり前のことがきちんと法律で謳われています。その中の1つ第43条はこのような条文です。
第四十三条 (高層建築物に係る郵便受箱の設置)  階数が三以上であり、かつ、その全部又は一部を住宅、事務所又は事業所の用に供する建築物で総務省令で定めるものには、総務省令の定めるところにより、その建築物の出入口又はその付近に郵便受箱を設置するものとする。」
条文をパッと見ると建築基準法のようですが、要するに3階以上の建物の出入り口には郵便受けを設置しなさいということが書かれています。つまり1、2階建ての建物が郵便受けを作らなくても良い、上述で言うところの例外として想定されているわけです。これは郵便の料金制度が距離ではなく重さに因って決まっていることも同じですが、とにかく郵便局の職員が過大な労力を必要としないでも業務が遂行できるようにというところから来ています。(郵便物の1つ1つを距離に応じた料金体系にすると、いちいち送り先までの距離を算定するのが大変なので。)
法令上では他の条文については抵触すれば罰則規定も決められていますが、43条については罰則規定があるほどではありません。とはいえ、書留を除けば3階以上の階に郵便局の方が配達には来てくれなさそうなので、どうしても必要に応じるかたちで、玄関廻りには郵便受けを設置しなければならなくなります。