5-6. 壁紙 (7)

日本人と紙というと古くから長い付き合いがあるようなイメージがありますが、これを壁紙に限定して言えば、先述の通り、伝統的な日本家屋においては襖や障子、屏風などに和紙が使われることあっても、壁に貼るということに関して言えば茶室を除いてそれほど一般的な作法ではなかったようです。それが現在のようにここまで普及したきっかけは、意外にも東京オリンピック時にホテルの建設ラッシュがあり、その室内に設えとして使われたことだそうです。そしてその後には住宅公団に採用されることとなり、全国的にスタンダードとして普及することになったとのことです。東京オリンピックと言えば1964年でちょうど50年前で、新幹線や首都高が開通するくらいの時間感覚で壁紙が普及したとは不思議な感じです。壁紙もいわば高度経済成長の隠れたシンボルなのかもしれません。
現在では言わずもがな、住宅を始めとしてオフィスなどでもよく使われますが、その大きな理由はコストパフォーマンスとメンテナンスが楽であることでしょう。特に賃貸物件でいえば入居時に壁紙が張替えられているか?ということが注目されますが、新しいもの→清潔感と考えがちな日本人には壁紙を張替えるのは障子や襖の張替え、畳の張替え感覚でなされるのが良いのでしょう。

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