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ところで話がずれますが、日本人の真新しい物好きは現代的な感覚というよりも、脈々と受け継がれているエスプリだと考える方が妥当なようです。欧米の価値観との違いを示す例として度々あげられるのが、ユネスコの「世界遺産」の価値観との距離です。当然、「世界遺産」(特に歴史遺産)の認定の枠組みは西欧的な観念から固められています。その認定要件を満たすためにはその価値の「完全性」と「真正性」を証明されなければいけないのですが、一般的に建造物の場合だと「真正性」を満たすために、それらを構成する材料がオリジナルでなければならないと言われています。
その価値観と対立するのが神道的な発想であり、20年に一度建て替えられる(式年遷宮)伊勢神宮です。伊勢神宮の場合は木造建築なので腐食などで耐久性を維持できないからといった技術的理由が与えられることもありますが、一方で年月が経つというのは「穢れ」であるということから常に清廉性を維持するために遷宮をすると考えられます。法隆寺の場合は世界最古の木造建築物として世界遺産に登録されていますので、必ずしも技術的に耐久性を維持できないという話ではないのです。

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