2-3. 近代/ビルディングタイプ (7)

ところが当時の建築家たちは、新たな公共的な建物の設計を依頼されても困ります。なぜなら今までにそんなものは存在しませんでしたから、参照する例がありません。あるいは場合によると全く困らなかったかも知れません、建築物はかくあるべきという思いがあるでしょうから。つまり駅であれば、建物のファサード(大雑把に言えば、外観)には従来通りのデザインを割り当てておいて、実際に駅として重要な部分と思われる蒸気機関車を迎え入れるホームなどの空間には、汽車が吐き出す煙がこもらない様な大空間を別に用意することで、お茶を濁したと言えるでしょう。

図2-3-5:リヨン駅外観

図2-3-5:リヨン駅外観

図2-3-6:リヨン駅内観

図2-3-6:リヨン駅内観

ここで話がそれますが、19世紀中頃から鉄を構造材料に使用した建築物が徐々にみられ始めます。鉄は先史より存在していますが、産業革命を期に製鉄に木炭を利用していたものが、石炭が利用できるようになりました。それと関連して、それまでは銑鉄という鉄中の炭素成分が多く脆い鉄から、錬鉄という強い鉄を石炭による高温の炉で製造することが可能になりました。

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