3-3. ミース・ファン・デル・ローエ (5)

先述の通り、この「ユニバーサル・スペース」はコンセプトとしては理解できますが、用途によっては無理があることもありました。その中で一番このコンセプトが嵌まった用途がオフィスビルだと言えるでしょう。

図3-3-6:シーグラム・ビル

図3-3-6:シーグラム・ビル

1958年にニューヨークに竣工したこのシーグラム・ビルは、ミースが設計した数少ないオフィスビルの1つです。敷地の前面に対して大きな公開空地を設け、鉄とガラスでシンプルな直方体の建物ボリュームとしています。コアとなる部分にエレベーターと階段といった縦動線及び水廻りを集中して、外周周りは建築的には間仕切りのないオフィスをレイアウトしています。

図3-3-7:シーグラムビル内観

図3-3-7:シーグラムビル内観

この内観写真を見て、現代的な感覚でいって全く違和感がないかと思いますが、まさにこの空間性がこのときから脈々と現代まで続いているからです。違った言い方をすれば、ミースによって既にオフィス空間の原型は完成されてしまったと言えるでしょう。僕のような現代の建築家は、この50年以上前に完成された空間を下敷きに設計をしているのですが、今後はそれを超えていくことが大きな課題でしょう。

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