6-2. 椅子 (10)

グレーチェアは身体性というものを発展させて、人間工学という視点からデザインしているという意味では椅子の系譜を継承しているデザインと考えても良さそうです。その後、座や肘掛けが上下する機構やバネで背のショックを吸収したりと、人間の身体に合わせた様々な改良がなされています。その1つの頂点とも言える椅子がアーロンチェアです。

図6-2-21:アーロンチェア

図6-2-21:アーロンチェア

1994年にハーマン・ミラー社から発売されたアーロンチェアは、使用者に合わせて細かくカスタマイズが出来るのが特徴で、一般的な99%の人が快適に使用出来るとのことです。ペリクルと呼ばれるメッシュ素材が座と背に使用されていたり、人間工学的に骨盤を支持して長時間座っていても疲れないように設計されているということです。事務用の椅子とはいえ1脚10万円以上もする高価なものであるということもあり、どちらかと言えば一般の事務員よりも会社の上層部の人に利用されているイメージが強く、テレビドラマや映画などでも時折その様なかたちで登場します。つまり、身体性から人間工学を追求してきた椅子であるとはいえ、社会で消費される際には常に椅子につきまとうある種の権威の象徴性は現代社会においても抜けきれていないということだと思います。

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