4-7. カーテンウォール (9)

図4-7-11:glass skyscraper

図4-7-11:glass skyscraper

図4-7-12:シーグラムビル

図4-7-12:シーグラムビル

これら2つのガラスのカーテンウォールの最も大きな違いは、やはりプロジェクトが実現しているものと、一方は未完であるものとの差だと考えられます。ガラス張りの建物を構想する際には建築家は皆、「ガラスのスカイスクレーパー」のように純粋なガラスの壁と床スラブによる建築物を実現したいと考えるものです。ガラスを外壁にした高層ビルの着想を得た段階のピュアなイメージを、この「ガラスのスカイスクレーパー」は見事に表現してみせていると言えるでしょう。
一方で「シーグラムビル」ではそのガラスのカーテンウォールを実際の超高層に採用する際に、当然ながら技術的な対応を迫られるわけで、元々のピュアなガラスの外壁のイメージと現実の技術との折り合いをつけて、作品として見事に昇華させた例だと思われます。つまり「シーグラムビル」においては、耐風圧にマリオンをつけたり、スラブ、梁の陰に金属パネルを採用していますが、それらは当初のピュアなイメージからすると邪魔なものです。しかし、技術的にはどうしても必要なものですから、それを逆手に取って立面のリズムをつくり、超高層ビルの大きな立面に無限に続くかの様に思わせる様な緻密なリズム感をもって、マリオンと金属パネルを割付けました。また敢えてマリオンを外側に取付けることで、縦方向のプロポーションを強調し、マリオン自体もH鋼とすることで重くなりすぎないような、見事なレトリックが駆使されています。

図4-7-13:シーグラムビルのマリオン

図4-7-13:シーグラムビルのマリオン

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