9-1. 図面 (9)

現在では業務上は殆どの図面はCADと呼ばれる設計用のアプリケーションを使ってコンピューター上で描かれますが、当然のことながら数十年前までは全て人の手によって紙の上に描かれていました。30代の設計者である私の個人的な経験としては、パソコン自体が高校生、あるいは大学生くらいの時に普及してきて、(インターネットを使うようになったのは大学生になってからです。)CADも大学の製図に使うようになってきた割と早い方だったように思います。ただ、私が行っていた大学の場合では、最初の課題は手描きで過去の名作住宅作品をトレース(複写)するというものでしたし、最初の自分の設計の課題も手描きが必須だったように思います。
というのも、コンピューター上では画面を拡大、縮小がマウスホイールをクルクル回転させるだけで出来てしまうので、図面の縮尺という概念が培われないという弊害があります。最終的に作られるものは、当然1分の1の実物大のものですので、それをどれだけの実感をもって図面に落とし込めるかということは、作図においてもっとも重要なファクターのひとつです。手描きで紙の上に直接描くという行為は、そういう意味でスケール感を養うのにとても重要です。実際に実務をする上でも、私の場合はCADで図面を描く前の段階で、度々手描きでスケッチをしています。

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