4-10. アトリウム (2)

図4-10-3:古代ローマアトリウム

図4-10-3:古代ローマアトリウム

古代ローマのドムスにおいて、アトリウムは最も重要な場所として位置づけられていたといいます。床は大理石で仕上げられて、スペースを広く見せるためにあまりモノはおかないようにしていたそうです。アトリウムの上部は勾配屋根が架けられていて、プレロマンの時代にはその屋根の勾配は内側に向いていたとのこと。(上図は19世紀ポンペイのアトリウムを描いたもの。屋根の勾配が外に向かって低くなっているので、プレロマン以降の形式と考えられる。)アトリウムの真中には[impluvium]と呼ばれる水盤がおかれ、屋根から落ちてくる雨水をその水盤に溜めるという仕組みだったようです。南イタリアの気候を考えれば水の確保というのは重要な課題で、以前にも書きましたが、古代ローマが長期間にわたって繁栄した1つの理由は水道が整備されたことだと言います。水道に加えて、このような雨水の確保といったような水対策がきちんと考えられていたという事だと思われます。
古代ローマ時代はバシリカにもアトリウムが付設されていたこともあり、バシリカを原型としたその後のキリスト教会建築にも当初はアトリウムが付いていたようです。現在でもよく見られる教会のファサードの手前に中庭を囲むかたちで回廊が廻るもので、現在でもイタリアの幾つかの教会で残されています。

図4-10-4:サンクレメンテ教会

図4-10-4:サンクレメンテ教会

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