5-8. コンクリート (15)

またコンクリートの構造表現としてシェル構造というものがあります。代表的なものは誰でも写真で見たことがあろうヨーン・ウッソン設計のシドニーオペラハウスです。

図5-8-11:シドニーオペラハウス

図5-8-11:シドニーオペラハウス

1955年に行われた国際コンペでエーロ・サーリネンがスケッチ程度しか描かれていないヨーン・ウッソンの作品を当選案にしたという逸話が残っています。シェル構造というのは、貝殻[shell]のように薄いけれども、そのものに加わる外力が曲面に沿うかたちで圧縮方向の軸力に作用することによって強度を保つという仕組みの構造で、そういう意味では球体、アーチなどと基本的な力の考え方は同じかも知れません。いずれにせよ、コンペ以前にサーリネンはシェル構造の構造的可能性を十分に理解していたでしょう。コンペで当選したウッソンはスケッチを完成させるのに、原案から調整を重ねて現在完成しているシェルの形にたどり着いたと言われています。
一方、コンペでウッソンを選んだサーリネンはというと、1962年のJFK空港のターミナルビルや1955年のマサチューセッツ州工科大学の音楽ホールを、シェル構造を使った屋根の架構とすることで、以前には見られなかったダイナミックな建築の屋根を実現することに成功しています。

図5-8-12:JFK空港ターミナルビル

図5-8-12:JFK空港ターミナルビル

図5-8-13:MITオーディトリアム

図5-8-13:MITオーディトリアム

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