2-3. 近代/ビルディングタイプ (5)

日本における近代は明治以降といわれていますが、西洋におけるそれは産業革命やフランス革命が1つの時代の区切りとして扱われています。(余談ですがフランスの美術史では近代[moderne]はルネサンス以降です。)そのような区切り方がされている理由は、1つには封建社会から市民社会に体制がシフトしたことです。社会の主役が市民になったことで新しい建築のビルディング・タイプが必要となってきました。
美術館を例えにすると、長い間王侯貴族は美術品を収集し、一部上流階級の人たちの間のみでそれらを鑑賞できれば良かったものが、フランス革命以降を啓蒙思想の広まりもあり、市民も平等にそれら美術品を鑑賞できるような要求が出てきました。その要求に応える形でかつて宮殿として使われていたルーブル宮は、美術館として利用されることになりました。元々、宮殿として使われていたものですから、当然個室が並列的に繋がっていくような空間構成となっています。現在も美術館の典型と言えば、展示室が一方通行の動線に沿って並ぶものですが、それは元来は宮殿を再利用して美術館と言うビルディング・タイプが成立したという名残と言えましょう。

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