2-3. 近代/ビルディングタイプ (9)

このように19世紀における新たな用途的な要求による新しいビルディングタイプの創出は必然とも言えました。また、それと同時に産業革命に伴った建築技術の発展もあり(当初はその技術は建築物には用いられませんでしたが)、先に挙げたリヨン駅の例もそうですが新しい技術とビルディングタイプの呼応がみられるようになります。ただし、リヨン駅の場合はそれぞれの場所での断片的な対応関係であり、それが全体性をつくるとは言えず、旧来の歴史主義から抜け出せずにいます。
その点、1850年前後にHenri Labrouste(アンリ・ラブルースト)が手がけた2つの図書館は、技術とビルディングタイプの対応が見事に合致しています。図書館自体は19世紀以前から大学があったこともあり、大学図書館として存在はしていましたが、現在とは違い当時は大学内に入れるのはごく一部のインテリ層であったことは想像に難くないことです。美術館と同様に図書館も啓蒙思想の波を受けて、市民に開かれた建物に向かいます。

図2-3-8:コインブラ大学図書館

図2-3-8:コインブラ大学図書館

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