2-3. 近代/ビルディングタイプ (10)

一般市民が図書館に入れるようになったことに対する建築的な一番大きな転換は、蔵書に加えて大々的に閲覧という機能が加わったことと言えます。それまではごく限られた人しか利用しなかったので閲覧するスペースも限定されていました。一方で市民社会が成立して市民の図書館利用に垣根が外されれば、多くの人が手に取った本を読むスペースが必要となります。
1850年前後にラブルーストによって計画されたLa bibliothèque Sainte-Geneviève(サント・ジュヌヴィエーヴ図書館)と
La bibliothèque nationale(国立図書館)の2つの図書館では、真中に多くの閲覧用机が並び、それを囲うようにして開架書庫が配置されています。それらの空間は十分に天井が高く、空間の容量がとても大きく、ハイサイドライトやトップライトからの自然光が柔らかく全体に回る様なスケールです。そのような大容量の空間を視覚的に遮ることなく、軽く屋根を支えているのが、当時の最新の技術を利用した鉄骨の柱と屋根の架構でした。実際に閲覧室で腰掛けてみると、開架の書籍に囲まれて人類の知の歴史に包まれているようです。
国立図書館の方は現在は改修中ですが、サント・ジュヌヴィエーヴの方は現在でも利用されていて、近くにある高校の学生が日々勉強に励んでいます。

図2-3-9:La bibliothèque Sainte-Geneviève

図2-3-9:La bibliothèque Sainte-Geneviève

図2-3-10:La bibliothèque nationale

図2-3-10:La bibliothèque nationale

最新記事40件を表示