4-1. エレベーター (4)

人用エレベーターの普及はニューヨークやシカゴにスカイスクレーパーをもたらしました。教会などの記念碑的建築物を考えると、それこそ中世の頃から現代の超高層にひけを取らない高さの建築物が建築されていました。建築技術の観点からすると石を積み上げて高層建築は出来ないことはなかったわけです。ではそれまでなぜ一般建築に対して高層が建てられてこなかったと言えば、単純に人が階段で上ることが大変だったからです。

図4-1-3:オスマニアン建築

図4-1-3:オスマニアン建築

以前にも例に挙げたオスマニアン建築はエレベーターが発明される前後に建てられた建物が多いですが、当時は未だエレベーターは設置されていませんでした。上図のものは7階建てですが、一般的に1、2階は地上の道との関係から商業や産業用途で、バルコニーで分節されている3階以上は住宅に使われていました。その住宅の中では下階の方がより資産価値は高く、最上階の屋根裏ともなると天井高は低く、細かく部屋に分かれていて使用人のスペースとして利用されるものでした。つまり階段で上まで昇っていくのは大変なことだったので、出来るだけ地面に近い方が有用であると考えられていたのです。イタリア語では地上階の直上階のことは「ピアノ・ノビレ」(貴族の階)と言われていたくらいで、富裕層は決して上層に住むことはありませんでした。

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