4-2. 自動ドア (4)

ヘロンの自動ドアの仕組みはこのようなものでした。しかし、結果だけ見れば、それは当時としては相当な驚きだったでしょう。祭壇に火を灯すことによって、神々が宿る神殿の扉が開くのですから。当時の人々の信心を深めるのには、もってこいの装置だったに間違いありません。
少々観念的な話になりますが、建築が存在することで初めて「内」と「外」という空間の概念が成立します。逆に言えば建物でなくても、「内」と「外」の関係を考えることが建築であるという言い方も出来るでしょう。「窓」や「扉」という建築物の部分は、その「内」と「外」の関係を繋ぐという意味で建築においてとても重要な部位です。窓は外と内における人の視線の関係や採光、通風といった環境的な関係をつくります。一方、扉については、人がその建築の内外に出入りするという行為をもたらす、即ち建築の内外という関係に加えて人がどこにいるかということにおいて、「こちら側」と「あちら側」という主体と客体の関係を位置づけるという意味もあります。

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