6-1. 机 (5)

20世紀に入ると建築や室内装飾の世界にアール・デコ[Art Deco]という様式が登場します。最も流行ったのは1920年代で、それまでのアール・ヌーボーから打って変わって、工業製品が世の中に多く出回るようになり、それに刺激を受けて、幾何学をモチーフにデザインが構成されています。日本でも旧浅香宮邸(現・東京都庭園美術館)がアール・デコの秀作として有名です。

図6-1-6:旧浅香宮邸

図6-1-6:旧浅香宮邸

私見ではありますが、机に関して言えばこのアール・デコは机のあり方をラディカルに突き詰めている意匠が多くみられると考えています。というのは、それまでは装飾で様々な様式を実現してきたものの、アール・デコという円や四角といった単純な幾何学な組合せで、机という小さなオブジェを構成するには違った思考が必要だからです。それまでは気が付かないうちに繰り返していた当たり前な構成を、幾何学の組合せで再構成することに成功しています。それらは即ち、机は足が4本、あるいは両側で支えられなくても良いということや左右非対称であっても構わないということ、あるいは平面的に四角くなくても構わないということです。

図6-1-7:アール・デコの机1

図6-1-7:アール・デコの机1

図6-1-8:アール・デコの机2

図6-1-8:アール・デコの机2

図6-1-9:アール・デコの机3

図6-1-9:アール・デコの机3

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