7-1. 熱環境 (4)

現代のオフィス空間を想像すると、ほとんどのデスクにパソコンが並んでいるのではないでしょうか?特にデスクトップ型のパソコンは大きな熱源ですし、それがたくさん並べば暖房がなくても冬でもさほど寒くはないかもしれません。逆にエアコンがなければ夏は地獄のようでしょう。
谷崎潤一郎が「旅のいろいろ」というエッセイの中でこのようなことを書いています。
「冬旅行をして困るのは、汽車、汽船、ホテル、旅館、電車、自動車等で、暖房の設備があるものとないものとあり、かつその温度がまちまちであるために、風邪を引き易いことである。…(中略)…尤も、ビルディングの冷房装置でもヤラレることがあるのだから…」
この文章は昭和10年(1935年)7月の文藝春秋が初出だそうで、つまりこの当時には暖房はもちろんですが、一部では冷房装置がすでに建物に導入されており、しかも現在も同じ様に効き過ぎている状態があったということは少々驚きです。
以前の稿で近代の高層ビルを成立させた技術はエレベーターであると言うことを書きましたが、高層階における風の強さや安全性を考えると窓を開けることは困難ですし、そういう意味で空調技術もそのビルディングタイプの成立に一役買っていることは紛れもない事実でしょう。

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