4-3. トイレ (3)

中公文庫から出版されている谷崎潤一郎の『陰翳礼賛』に「厠のいろいろ」というエッセイが収録されています。またタイトルとなっている「陰翳礼賛」というエッセイの中にも日本建築における便所について一部書かれており、現代的な感覚からするととても興味深い論考になっています。
「…日本の厠は実に精神が安まるように出来ている。それらは必ず母屋から離れて、青葉の匂や苔の匂のして来るような植え込みの陰に設けてあり、…その薄暗い光線の中にうずくまって、ほんのり明るい障子の反射を受けながら瞑想に耽り、または窓外の庭のけしきを眺める気持ちは、何とも云えない。」
ある意味では英語の[rest room]的な話なのかも知れませんが、「ご不浄」的なニュアンスというよりもむしろ心安める瞑想の場としての日本の便所の美学を書いています。白い壁に囲まれた水洗の西洋式トイレは衛生面で優れていることは理解しつつも、
「総てのものを詩化してしまう我等の祖先は、住宅中でどこよりも不潔であるべき場所を、却って、雅致のある場所に変え、花鳥風月と結びつけて、なつかしい連想の中へ包み込むようにした。」
との解釈は、現代のトイレを再考する上で参考になる論考です。

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