6-2. 椅子 (1)

6. オフィスの設え

あけましておめでとうございます。本年の連載も引き続きよろしくお引き立て頂ければと思います。
2014年、1回目のトピックは「オフィスビルの設え」として「椅子」をテーマにします。6−1では机について考察しましたが、オフィス内ではそのセットとなる椅子についてです。今回もまずはオフィスという枠を外して、椅子そのものの歴史から見ていきたいと思います。
日本では長らく床座の文化であったことから、椅子の歴史はあまり長くないようですし、椅子が存在はしていたものの、あまり普及はしていなかったようです。現在でも時代劇などを見ていると出てくる、床几(しょうぎ)が折り畳み可能な携帯用の椅子として利用されていたようです。これは古墳時代の出土品からも発掘されているとのことです。

図6-2-1:床几

図6-2-1:床几

また面白いエピソードがあります。19世紀の半ば、ロシア使節プチャーチンの秘書として日本を訪れたゴンチャロフがその著書『日本渡航記』に記したところによれば、ロシアと日本政府の要人が会談する際にまず床座にするか椅子座にするかが話し合われた。そして、ロシア人が畳の上に5分と座れなかったのと同様に、日本人が椅子の上に5分と座れなかったとのことです。姿勢というものは面白いもので、その人の日常が否応なく表れるシーンだということですね。

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