4-8. 階段 (5)

このような身体の位置の高低差が象徴する身分というものは日本だけに限ったことではなく、世界的に見られる事象のようです。

図4-8-4:ナポレオンの戴冠式

図4-8-4:ナポレオンの戴冠式

新古典主義の画家、ダヴィットが描いたナポレオンの戴冠式の様子です。本来は戴冠されるナポレオンが跪き司教によって頭に冠を載せられるはずが、一転して王妃となるジョセフィーヌにナポレオン自らが戴冠するということで、教会の権威を超えて皇帝として君臨するナポレオンを描いたとして有名です。この絵でも戴冠される側のジョセフィーヌは階段の下で跪き、階段の上からナポレオンが戴冠しています。これはジョセフィーヌ<ナポレオンという関係性を表現したいのではなく、ナポレオン=教会(=神)という図式を表現し、皇帝であるナポレオンが神格化されていることが分かります。
このように空間の上方は身分が高く、下方は低いという連想は世界各地で共通した認識で、例えばギリシア神話では死後の世界は地底にあり、地上階に人間、天空には神々が住んでいるということになっていますし、それは日本の神話でも一緒で黄泉の国は地下にあることからも分かります。

最新記事40件を表示