5-7. 鉄 (14)

図5-7-11:サント・ジュヌヴィエーヴ図書館内観

図5-7-11:サント・ジュヌヴィエーヴ図書館内観

このような空間の機能的要求はそれまでのビルディングタイプにはなかったものです。敷地いっぱいの80m x 15mの平面に屋根を架けようとすれば基本的には短手方向に梁を渡そうとします。これを旧来通りの組積造でやろうとすると、15mのスパンを2分割あるいは3分割することになりますが、ホールの真ん中に必然的に出てくる柱も石の太く重苦しいものとなるのは間違いないでしょう。ここでラブルーストは鋳鉄の細い柱とアーチ型の梁で短手を2分割することで非常に軽快で明るいインテリアを実現しています。外周部の柱は石のままとして、アーチから流れてくる開く方向の力を重たい石で受け止めています。またこのような架構のおかげで15mもの高さの天井高さを確保できているために、2階分の高さのある本棚のさらに上部で、アーチ上のハイサイドライトを四方に取ることに成功しています。
ここまでずっと先史以来の鉄と人とのつながりを俯瞰してきて、一般的な道具や建築の部分については鉄もそれなりに使用されてきたことを書いてきましたが、やはり建築としては構造体に鉄が使えるようになったということが、19世紀のその時代の潮流とともに、建築の歴史におけるひとつの大きな革命だったと言えるかと思います。

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