4-14. 窓 (9)

また別の水準での窓の分類を考えると、開き方ということがあります。この開き方に関しては、扉と重複することが多いです。
まずは開く窓に対して、開かない窓である「嵌め殺し窓」[fixed window]が考えられます。えらい物騒な名称に聞こえますが、建築の言い回しで「殺す」というのに「動かない」という意味があります。嵌めて動かなくした窓だから嵌め殺し窓という訳です。開かないので当然通風は期待できませんが、採光や眺望は期待できます。高層ビルなどで窓からモノを落としてしまったりすると危険なので嵌め殺しにしている場合やホテルなどでは飛び降り自殺防止のために嵌め殺し(あるいは少ししか開かない窓)にしている、という理由も現実的にはあったりします。
また「引き違い窓」[double-hung window]は日本では住宅などでもよく用いられるよくみる開き方のパタンです。というのは、欧米の建築では日本ほど一般的に引き違い窓が流通していません。はっきりとした理由は分かりませんが、恐らく歴史的に木造で在来構造が主流で、1間(長さの単位、1間=6尺)を単位としたスパンで柱が並ぶので、その距離を全て建具としてつくれるのに対して、西欧の建築では石を積んだ壁構造が主流で、開口部の上はその上の荷重を受けるマグサのスパンで開口部の幅が決まりました。当然、石の壁の荷重を受けるマグサは長い距離を飛ばすことが出来ずに、必然的に縦長の窓になりました。引き違い窓にする場合には左右に障子を動かして、障子を互いに重ねる形で開けることになるので、スパンの半分しか実質は開きません。こういったことで西欧の近代以前の建築には引き違い窓が向いていなかったという事実があるかと思われます。逆に日本建築では十分にスパンが取れているので、引き違いにして半分しか開口部として利用できなくても、それで十分であったと考えられます。あくまでも想像ですが、そんな建築のバックグラウンドが未だに窓の開き方のスタンダードとして息づいているのかもしれません。

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