4-14. 窓 (10)

少し話が逸れるかもしれませんが、引き違い窓に関して言えば、その障子の動き方が開き系の窓とはずいぶん違った挙動だと考えられます。伝統的な日本建築の場合、ガラスが建具に使われるようになったのは近代前後のことだと思われます。それまでは、障子(この場合は伝統的な日本建築で言うところの障子)や襖に使われるような紙や雨戸に使われるような木がグレージング部において主たる材料となっていました。特に西欧と違うのは紙を使うことで、現代的な感覚で言えば断熱性能が極めて低く、冬のことを思えばとても寒々しい素材です。意匠的にはうっすらと外光を取り入れることはできるので、デメリットだけの素材という訳ではありませんが。いずれにせよ、そのような極めて軽い素材を建具に使用するということは、建具が軽くなるということです。一方で西欧は古代から窓にガラスを使用していましたが、それは単純に紙と比較してしまえばとても重い素材です。ここで引き違い窓の開き方を考えた際に、もし障子に分厚いガラスが嵌められていて思いものだとしたらスライドして開けるということが、それほど容易ではないということは想像に難くありません。よくよく思い出してみると、普通に使われている木と比べて、障子に使われている木は何となく柔らかくて軽いものだったと思えないでしょうか。一方で西欧的な回転系の開き方を考えると、多少障子が重かろうが軸を中心として容易に回転できます。さらにこの場合、高さ方向が長く幅が狭いとモーメントが小さくなるので開き易く、一方で幅が広いものはモーメントが大きくなるので開けるのが大変になるということも想像していただけると思います。つまり西欧的な間口が狭くて高い建具(窓、扉)は回転系の開き方に対してはとても有効で、一方で日本的な間口が広く、軽い建具は回転系というよりもスライド系の開きをした方が有効であるということが力学的にも理解できます。

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