5-8. コンクリート (4)

先述の通り、鉄筋コンクリートを考案したジョセフ・モニエは植木鉢のために、そしてそれを建築用の技術にまで高めて建物を実現したフランソワ・エンビックなどはあくまでもエンジニアだったため、建築意匠における鉄筋コンクリートの可能性を提示したとは言えません。そのような意味で建築意匠において鉄筋コンクリートの価値を見いだした最初期の建築家の1人がオーギュスト・ペレ[August Perret]です。

図5-8-4:フランクリン街のアパートメント

図5-8-4:フランクリン街のアパートメント

パリ16区、エッフェル塔を対岸に臨むシャイヨー宮の脇にrue Benjamin Franklin すなわちフランクリン街があります。前面道路の向かいにはシャイヨー宮の一部である国立海洋博物館の庭が広がっており、急な勾配の坂の先にはセーヌ川が流れています。南東向きにファサードが面しているこの建物はこの好立地を最大限に享受しようということだと思います。向かって左側の階高の高い建物に階高を合わせて調整し、RC造ならではの開口部の大きさを獲得しています。前面道路から引っ込む形で正面中央部を逆ボウ・ウィンドウのようにボリュームを操作して、南東ファサード向きのガラス面をさらに大きくしています。このように組積造の建物を両隣に挟んでみると、RC造の柱梁の組合せがとても軽快に出来るということが相対的に見て取れます。

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